キヤノン「PowerShot G1 X Mark III」開発者インタビュー
それでは、なぜ今回、コンパクトデジカメの「PowerShot G1 X Mark III」に大型のAPS-Cセンサーを搭載することになったのか。商品企画担当を担当した野田忠男さんは、「大型センサーを搭載すると、カメラボディのサイズがどうしても大きくなってしまうわけですが、それでもPowerShot Gシリーズは(コンパクトデジカメなので)小さくしなければならない。非常に制約が大きい中、このカメラをフラッグシップとして打ち出していくために商品開発を行ってきました。正直、ニッチな製品であるとは思うのですが、我々としてはシリーズ最上位機種として画質にもこだわり、しかも光学ズームレンズを搭載した新しい機種としての表現したのが、このカメラです」と話す。
APS-Cセンサー搭載コンデジで光学ズームレンズ採用のカメラは珍しい
レンズ一体型のいわゆる“コンパクトデジカメ”にAPS-Cセンサーを搭載したカメラは、他社からも発売されている(富士フイルム「Xシリーズ」やシグマ「dp Quattro」シリーズなど)。しかし、いずれもレンズは単焦点となっており、過去にAPS-Cセンサー搭載機で光学ズームレンズを採用したカメラは「ライカXバリオ」のみと非常に珍しいのだ。
また、このレンズシステムはコンパクトデジカメの利点であるマクロ撮影の強さも兼ね備えている。最短撮影距離が広角側で10cm、望遠側で30cm(レンズ先端からの距離)とかなり寄れる印象。しかも「マクロモード」に切り替えなくても、これだけの接写能力があるのは利便性が高い。ちなみに「マクロモード」での撮影距離は10~50cm(ワイド側のみ)なので、最短撮影距離は「オート」と同じ設定となっている。
ズームレンズは単焦点レンズに比べ、使われるレンズの枚数が増えるというのが基本。しかし、光学3倍ズームでありながら8群9枚のレンズ構成は、かなり少ない部類といえる。レンズの光学設計に関して、レンズの光学設計を担当した伊藤大介さんは「高画質を維持してレンズを小型化するためには、構成するレンズ枚数を減らすことが必要となります。レンズ枚数が少なければ少ないほど、カメラの電源をオフしたときのレンズ鏡筒の厚み(沈胴厚)を薄くできます。このためには、レンズ枚数の削減に加えて、レンズ全長を縮めることも注意して設計しています」と話す。