日本で見いだした故郷アイルランドの面影|小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーンの妖精紀行
ニュースになった妖精の復讐
今も多くのアイルランド人が記憶にとどめているニュースをご紹介しよう。 1999年、クレア州で高速道路計画が延期された。そこに『妖精の木』があり、撤去に対して大きな反対運動が起こったからだ。『妖精の木』に害を及ぼせば、高速道路で多くの死者が出るという意見まで噴出し、最終的に『妖精の木』がそのままにされたニュースはアイルランド以外の海外でも大きく報道された。 2011年11月22日付けで国有紙が『妖精の復讐』を報道した。 アイルランドで最も裕福なビジネスマンだったショーン・クインが事業で大失敗し破産したが、彼の地元キャバン州の人々は眉をひそめてこうコメントした。 「彼はビジネスのために4000年前の巨石墳墓を壊して移動した。古代墳墓、妖精の木や輪の平和を乱せば必ず妖精に復讐される」
望郷の念
ラフカディオは13歳まで過ごしたアイルランドへの望郷の思いを同胞の詩人W.B.イェイツ への手紙で、こう吐露している。「乳母がケルトの幽霊や妖精の話をしてくれたからこそ、そして自分は本当にアイルランドを愛しているのだ」 ハーンは愛憎半ばするアイルランドへの思いを募らせる一方で、もう誰も出迎えてくれる人もない寂しさもわかっていた。故郷から遠く離れた日本は自分の母が体験したように全てが異なる国だった。しかし日本で家庭を持ち、またケルトの神々のように、八百万の神がいて、自然や不可思議なものに敬意を払う日本文化は、彼に懐かしき故郷の面影を見せ、立ち昇る望郷の念を癒してくれたのではなかっただろうか。 文・写真/織田村恭子(アイルランド在住ライター)日本の多岐に渡る雑誌に現地ニュース、歴史・社会問題、旅行、料理等、記事・エッセイを執筆。またNHK地球ラジオを始め日本のラジオ番組へもアイルランドからニュースを発信。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員。
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