<ルックバック>AIでは表現できない線 人間が描く意味 押山清高監督インタビュー(2)
AIが絵を描く時代に、あえて人間らしさを表現しようとした。
「AIによってキレイな映像が簡単に作られるようになってきているから、こういう人間が描く線に活(い)きがあると思います。AIが人間のまねをして下描き線を再現したとしても、それはただのデザインになってしまう。それは偽物です。人間が描くからこそ意味がある線なんです。こういうことができるのは、今が最後かもしれないけど、それにこそ価値がある。クリエーター賛歌につながっているところでもあります」
「なんで描いてるの?」。京本から藤野に投げかける言葉に心を動かされた人も多いはず。最後に、押山監督にも同じ言葉をぶつけた。
「何でこんなに一生懸命に作品を作り続けているのか……。別に成果がほしいだけでもなくて、そうせざるを得ないという自分の生き様なのかもしれませんね。自分が楽しい思いをしようとした結果なんです。アニメーション作りが始まり、突き進んでいる時が一番楽しい。それがないと、こんな大変なことはやらないです。『はじまりへの旅』という映画の『日々 人生最後の日と思え。全ては一瞬だ』という言葉が印象に残っているのですが、どの瞬間も精いっぱいやった方が楽しい。極めて人間らしいのかもしれません。自然に食って、寝て……という生活からは外れているけど、尊く、それでしか味わえない楽しさがある。クリエーター以前に人間賛歌ですね」