税務調査で初めて発覚⇒あえなく追徴課税も…「相続人さえ知らない貸金庫」が税務署にバレるワケ【税理士が解説】
相続時には貸金庫を必ず確認
被相続人が貸金庫を利用していた場合、税務調査が入ったときに貸金庫の存在を隠しきることはできません。また、相続手続きには期限が決まっているものもあり、相続税の申告についても、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヵ月以内に行わなければなりません。 したがって、相続が発生したときには貸金庫の利用があるかどうかを早めに確認することが大切です。 ■貸金庫を開けるには「相続人全員の同意」が必要 貸金庫は、原則として契約者本人しか開けることができませんが、被相続人が亡くなった場合は、相続の権利を有する人が貸金庫を開ける必要があります。しかし、相続人であっても簡単に貸金庫を開けることは許されません。契約者が亡くなった後に契約者以外の人が貸金庫を開けるときには、相続人全員から貸金庫を開けることについての同意が必要です。 金融機関によって必要な書類は異なりますが、遺産分割協議書や相続人全員の同意を示す書面のほか、被相続人の戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書、貸金庫の鍵やカードなども必要になるケースが多くなっています。 また、金融機関によっては必要書類の提出だけでなく、貸金庫を開けるときに相続人全員の立ち会いを求めるケースもあります。 ■ただし、遺言執行者の指定がある場合は単独での解錠も可能 遺言書があり、遺言書の中で貸金庫の扉を開ける執行者が指定されている場合は、相続人全員の同意がなくても、遺言執行者が単独で貸金庫を開けることや中身を確認することもできます。 <貸金庫の中身の確認と申告方法> 貸金庫を解錠し、中に入っているものを確認したら、必要に応じて相続税の申告を行います。 現金の場合は、そのまま正しく計上し、預金通帳が入っていた場合には、相続が開始された時点の残高を計上します。 また、被相続人名義の不動産の権利証などが入っていた場合には相続税評価額、宝飾品については相続開始時点での時価額の形状が必要です。生命保険証書が入っていた場合は、契約内容に応じて計上を行います。 ■「申告後」に貸金庫の存在に気が付いた場合は…? 被相続人から貸金庫について事前に情報を得ていた場合や遺言書で貸金庫に触れられていた場合は、スムーズに貸金庫の解錠手続きや相続税の申告手続きができるでしょう。しかし、貸金庫を利用しているということを知らされていないケースでは、貸金庫の存在に気が付くまで時間がかかることもあるかもしれません。 相続税の申告を終えた後に貸金庫の中に財産が入っていたことが発覚した場合は、早急に正しい申告書を作成し、申告をし直す必要があります。 ■税務調査で貸金庫の指摘を受けた場合、追徴課税となる可能性も 税務調査が入るまで貸金庫の存在に気が付いていなかった場合や、貸金庫に気が付いたものの修正申告をしていなかった場合、追徴課税がなされる可能性があります。 税務調査時に申告の誤りを指摘され、本来納めるべき税額よりも申告・納税をした額が少なかった場合、ペナルティとして過少申告加算税が課せられます。過少申告加算税の額は、新たに納税することになった税額の10%です。ただし、新たに納税する額が当初の申告納税額または50万円のどちらかよりも多い場合は、超過分に対しては15%に当たる額を納税しなければなりません。 ■税務調査前に自主的な修正申告をすれば、過少申告加算税は免除 たとえ申告期限が過ぎている場合でも、税務調査の事前通知が入る前に自主的に修正申告を行った場合は、過少申告加算税は免除されます。 また、税務調査の事前通知を受けてから自主的に修正申告をした場合も税率が軽減され、50万円までは5%、50万円を超える部分については10%の税率が適用されます。 相続税の申告期限の前に、貸金庫の存在を確認しておくことが大切ですが、万が一、申告期限後に貸金庫の中に財産が見つかった場合は、税務調査の連絡が来る前に自主的に修正申告を行うようにしましょう。また、税務調査の事前通知が入った場合は早急に税理士に相談し、税務調査が行われる前に自主的に修正申告を行うことをおすすめします。