まひろでさえも勝てない…思わずひれ伏したくなるほどの最強キャラとは? NHK大河ドラマ『光る君へ』第43話考察レビュー
川辺での一件でカリスマ性が増した道長
どの時代においても己の信念を曲げない実資は本作の良心とも言える存在。部下たちのこともよく見ており、木の枝が目に入って痛みが取れない隆家(竜星諒)のもとにも見舞いに駆けつける。 そんな実資から太宰府に目の病を治す薬師がいると聞いた隆家は、次の除目で大宰権帥に任じてほしいと直談判。その申し出が受け入れられたことによって、隆家よりも先に大宰権帥に名乗り出た行成(渡辺大知)の願いは叶わなかった。 若い頃から道長に憧れ、彼が左大臣になってからはその右腕として活躍していた行成。しかし、道長が一条天皇(塩野瑛久)の第一皇子・敦康親王(片岡千之助)ではなく、自身の孫である敦成親王(濱田碧生)を無理やり東宮にしたことから不信感を抱くようになった。 その心労で病が進行した一条天皇は譲位。そして、また三条天皇に譲位を迫る道長に行成はこれ以上、ついていけないと思ったのだろう。自分は正しいことをしているから皆の心が離れるとは思わないと実資に反論していた道長だが、実際に少しずつ周りの心は離れ始めていた。 しかし、道長は「俺のそばにいろ」というたった一言で行成の心を繋ぎ止めてしまう。たしかに、あの川辺で一度死に生まれ変わったとも言える道長の覚悟は強く、以前よりもカリスマ性を増した。 道長に認められることが何よりの喜びだった行成からしてみれば、そんなことを言われたら離れ難くなるのも無理はない。まるでダメな男だとわかっているのに、別れられない乙女のような顔を見せる行成に少し笑みがこぼれた。
正妻・倫子(黒木華)の矜持と度量
男女問わず人を惹きつける魅力がある道長。彼を愛した一人である倫子(黒木華)は「私は、殿に愛されてはいない」と、いきなりドキッとする言葉を放つ。 道長にはもう一人の妻・明子(瀧内公美)がいるが、明子でもない、他に心から愛している人がいることに倫子は気づいていた。そのことで苦しんだこともあるが、今はどうでもいいと言う倫子。 「彰子が皇子を産み、その子が東宮となり、帝になるやもしれぬのでございますよ。私の悩みなど吹き飛ぶくらいのことを殿がしてくださった。何もかも、殿のおかげでございます」と笑顔で道長に語りかける。 時代が時代とはいえ、これまで必死に支えてきた夫に本命がいることを知って傷つかないはずはないのに、泣きわめくことも責めることもせず、今の暮らしに感謝する倫子。 正妻としての矜持と度量を見せつけられ、思わずひれ伏しそうになった。ヒロインであり、道長から愛されているまひろでさえも勝てないと視聴者に思わせる。 また、ききょう(ファーストサマーウイカ)もようやく恨みから解放されたようだ。「恨みを持つことで、己の命を支えて参りましたが、もうそれはやめようと思います。 この先は脩子様の成長を楽しみに静かに生きてまいりますので、お心おきなくご出立なさいませ」と隆家に告げたききょうの顔はすっかり憑き物が落ち、晴れやかだった。倫子もききょうも私たちの見えないところで葛藤があったのかもしれないが、人生の酸いも甘いも噛み分けて落ち着いたのもあるのだろう。