時価総額1.8兆円の語学アプリ「Duolingo」を生んだグアテマラ出身の起業家
時価総額が120億ドル(約1兆8000億円)を上回る語学学習プラットフォーム、Duolingo(デュオリンゴ)の創業者でCEOのルイス・フォン・アーン(46)は、人工知能(AI)が人々のいくつかの仕事を奪うだろうと述べている。 彼の言葉には、実体験が伴っている。昨年末にDuolingoは契約社員の約10%を削減し、代わりにAIを一部の業務に使用することを決定した。「会社としての方針は、もし何かを自動化できるならば、そうするというものだ」と、フォン・アンは人員削減について語った。 「正社員の仕事を自動化するのは非常に難しいが、時間給の契約社員が行っていた単純作業は自動化できた」 彼は、この決定が自社にとって正しい道だと強く信じているが、AIがもたらすより大きな問題があることを認識している。「AIは、貧しい人や教育を受けていない人々の仕事に影響を与えるだろう」と彼は言う。「しかも、それはアメリカだけのことではない。貧しい国々でも同じだ」 フォン・アンは、AIが公平なものになるためには、世界各国の政府が賢明な規制を設ける必要があると指摘した。しかし、彼は米国にはあまり期待していない。「アメリカがこれをうまく立法化するとは想像しにくい。この国は、何一つ合意を形成できないのだから」 ■「AI家庭教師」の実現へ しかし、フォン・アンは、長期的スパンでは楽観的で、AIが学習に新たな可能性をもたらし、高品質な教育を低コストで大衆に提供できるようになると考えている。彼は、語学を学ぶことが人々を貧困から救う手助けになると考えており、特に非英語圏の人々が英語を学ぶことは収入の増加に直結し、新たな職業の機会を広げると述べている。彼は、DuolingoがAI主導の学習への移行の最前線に立っており、最終的に誰もが外国語を学べる「AI家庭教師」を送り出すことを目標としている。 「人間の家庭教師が仕事を失うかもしれないが、全体としては学びたい人の全員が教育にアクセスできる方が良いと思う」 フォン・アンは強い主張をすることを恐れていない。彼は、DuolingoのマスコットであるフクロウのDuo(デュオ)がユーザーの家に押し入ってレッスンを強制するといったミームを楽しんでおり、同社のブランドを「健全でありながら少し狂っている」と話している。また、彼の母国、グアテマラの元大統領であるアレハンドロ・ジャマテイを腐敗していると非難し、批判した(彼はまた、今年1月に就任した新大統領のベルナルド・アレバロへの最大の献金者でもある)。そして彼は、「AIがコンピュータを人間の教師よりも優れたものにするだろう」とも述べている。 Duolingoは9月に、AI家庭教師の実現に向けての最初のステップを発表した。それは、同社の人気マスコットの1つである皮肉屋のアニメキャラクター、リリーとユーザーがビデオ通話をするインタラクティブ機能だ。ユーザーは、OpenAIのGPT-4oモデルによって生成されるリリーとの会話を通じて、友達と会話をするような感覚で会話を練習できる。 この機能は、昨年発表された月額30ドル(約4550円)のDuolingo Maxというサブスクリプションプランの一部で、AIが答えを間違えたユーザーに、その理由を教える機能なども含まれている。他にも、カフェでコーヒーを注文したり、海外旅行先の入国審査など、シチュエーション別の会話ゲームである「Adventures」が新たに追加された。