「高速ツアーバス」廃止、8月から新制度でどう変わる?
安さを武器に多くの人から支持を集めていた「高速ツアーバス」。しかしその安さの背景には、安全を軽視した運行や運転手の過酷な労働環境などの問題もあり、2012年4月には関越自動車道で乗客45人が死傷する事故が起こりました。事故を受けて8月から高速ツアーバスが廃止され、新しい「高速乗合バス」の制度がスタートします。何がどう変わるのでしょうか。
関越道事故で指摘された問題
群馬県の関越自動車道で起きた事故では、バスが側壁に激突し、乗客7人が死亡、乗客38人と運転手が重軽傷を負いました。居眠り運転をしていたとされる運転手の過労や、深夜の1人乗務、競争激化で人件費の削減に走るバス業界の実態が浮き彫りになりました。旅行会社が企画して貸し切りバス会社に運行を委託する形態が、責任の所在をあいまいにしているとの指摘もありました。 12年8月には東北自動車道で高速ツアーバスの運転手が居眠りして、乗客など31人が負傷する事故が起こりました。
自前のバスが必要に
現状では高速ツアーバスのほか、バス会社が決まった停留所やルートで自ら運行する「高速路線バス」があります。新制度では、この2種類を「高速乗合バス」に一本化します。つまり、高速ツアーバスという業態を廃止するのです。これまで高速ツアーバスを走らせていた旅行会社やバス会社が自ら路線バスの許可を取り、旅行会社も自前でバスを持つ必要が出てきます。また運転手の健康管理を義務づけることで、安全対策を強化します。 関越道事故が起きるまで、高速ツアーバスを1人で運転できる距離は上限670キロでした。事故後に夜は原則400キロまでに規制され、新制度では昼は上限500キロに規制されます。それ以上の長距離では交代の運転手が同乗しないといけません。人件費がこれまで以上にかかります。 厳しい規制のかかる新制度に移行できる高速ツアーバス業者は限られ、国交省に新制度に移行すると答えたのは286社中111社でした(朝日新聞7月5日付)。