30年ぶりの「少数与党」 謙虚な政権運営へ、世論寄り添う姿勢も
第2次石破内閣発足から一夜明けた12日、石破茂首相は政権運営を謙虚に進めていく決意を改めて示した。自民党派閥の裏金事件に足を引っ張られて衆院選で大敗し、「少数与党」となったことを受けて、世論に寄り添う姿勢を前面に押し出す。野党が求める政治改革の実現を突破口にしたい考えもにじませた。 【図で解説】そもそも…自民・安倍派の政治資金問題の構図 首相は首相官邸で記者団に「30年ぶりの少数与党だが、その意義をよく踏まえ、国民の多様な意見をできるだけ丁寧に反映しながら、ことの解決に当たっていきたい」と述べたうえで、「今までできなかったことを、この政治状況を使って実現していきたい。幅広く合意をとっていきたい。丁寧にやるが、同時に濃密かつ迅速な対応をしていく」と語った。 政治改革についても「今まで整理がついていなかった資金の話、あるいは党のガバナンスの話について突っ込んだ議論をしていきたい」と話した。 1994年の羽田孜内閣以来、30年ぶりの「少数与党」となり、石破政権は野党の協力を得なければ、予算案など必要な政策を前に進めることができない。首相はこの状況をバネに、野党の意見に対しても低姿勢に耳を傾け、積極的に取り入れながら政策実現を図る考えだ。 政治改革に関しては、世論に応えて取り組む姿勢をアピールすればするほど、党内にくすぶる「石破おろし」をけん制できるとの思惑も透ける。首相は11日夜の記者会見でも「政治資金に厳しい国民の目が向けられていることを強く認識し、政治は国民のものであるという原点に立ち返って政治改革と党改革に取り組む」と改めて強調した。 過半数を占める政党や勢力がない「ハングパーラメント(宙づり国会)」では、審議が活性化すると積極的にとらえる向きもある。首相は会見で今後の国会運営について「ある意味、こういう状況は民主主義にとって望ましいことなのかもしれない。与党が過半数を割ったことが望ましいと言っているのではなくて、より議論が精緻になるということだ」と前置き。「与党と野党の意見が違った場合に合意できる点はないか、法案の修正をなぜ受けるのかを(国民に)よく理解いただけるようにするのは、民主主義の発展にとって極めて重要だ」との見解を示した。 会見では、厳しさを増す安全保障環境への対応▽治安・防災への更なる対応▽日本全体に活力を取り戻す――の3点に優先して取り組むと表明。政権の看板政策の地方創生などに関しては、手元に用意された原稿を見ずに自身の言葉で語る場面もあった。【園部仁史、影山哲也】