幼い頃泣けなかった私 「母は’お兄ちゃんのお母さん’で、私のお母さんではない」 障がい者のきょうだいに生まれて
■母の謝罪「健常者はほっといても育つと思っていた」 お母さんは’お兄ちゃんのお母さん’であって、私のお母さんではないと思って生きてきた。 その兄は3年前、がんで亡くなった。兄の死後、涌本さんは母に「子どもの頃から辛い思いをしてきた」と打ち明けた。 母は、「障がい者は手をかけないといけないけど、健常者はほっといても育つと思っていた。健常者にも目をかける必要があったのね」と謝ってくれた。 母も必死だったのだ。 「でも、年老いた母に『ごめんね』と謝らせた自分が情けないんですよ」涌本さんはつぶやいた。 ■「自分は変われる」私も誰かに伝えたい 涌本さんは今、自分の気持ちをこう振り返る。 涌本祐子さん「自分より年上に障がい者のきょうだいがいると、末っ子であるにもかかわらず一度も母を独り占めにした事がなくて、周りを頼るのが苦手になっていました。いつもひとりで漠然とした不安を抱えていました。周りからは強くてしっかりした良い子だと思われていましたが、一般的な子ども時代や青春を経験せずに大人になっているので、そのことが人生を送る上で不安材料になって、精神的に追い詰められるようになっていたのではないかと思います」 自分を冷静に見つめることができるようになったのは、きょうだい会の存在があったからだ。同じ思いを抱える仲間が沢山いることを知り安心した。同時に、自分の経験を自らの言葉で語り人に共感してもらえたことで、ガチガチに緊張していた肩がほぐれ、「自分は変われるかもしれない」という確かな手応えを感じたという。 涌本祐子さん「それからの人生が劇的に変わったわけではありませんが、安心して本音が話せる場所がある事で、周りの景色が変わって見えるようになりました。ひとりで悩んでいるきょうだいの方、家族の方に知ってもらいたい、それを伝えられる自分になりたいと思うようになりました。」 きょうだいたちの悩みは十人十色。61年続く「きょうだいの会」が心に抱えた荷物を下ろす場所になっている。
RKB毎日放送
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