バルサが急に失速したのはなぜか 不安定な守備はもはや伝統、わかっていても修正できない
【レアル・マドリード戦は大当たりしたが...】 実はオールドファンにとって、この光景は目新しいものではない。バルサはもともと、"こういうチーム"なのだ。 「こういう」は、「不安定な」に言い換えてもいいだろう。矛盾しているようだが、その危うさこそ、彼らの根源的な魅力でもあった。どう転ぶかわからない、それでも攻め続けるサッカーが世界中を魅了した。驚嘆すべき攻撃力は、いつだってやわで脆い守備と表裏一体だったのだ。 バルサは今も、中興の祖であるヨハン・クライフが編み出した「無様に勝つな」という伝統が息づくクラブである。「美しく勝利せよ」という唯一無二の考え方が、彼らの土台にある。美しさとは、ボールをつなぎ、転がし、ゴールに迫るひらめきを指し、「ボールを持っていれば失点しない」のが論理の出発点である。当然、選手育成や補強もその路線になり、監督にもボールゲーム中心の采配が求められる。 今も昔も、バルサはクライフが紡ぎ出した"縛り"のなかで力を発揮している。フランク・ライカールも、ジョゼップ・グアルディオラも、ルイス・エンリケも、多かれ少なかれ、その縛りからは逃れられない。それに反旗を翻すことは誰であろうと許されず、時代の変化のなか、縛りをアジャストさせることで、バルサはバルサとして立ち行くのだ。 今シーズン、監督に就任したハンジ・フリックは、ハイプレス、ハイラインを敷くことで、伝統の攻撃的サッカーを旋回させていた。攻撃的な守備姿勢で、攻撃こそ防御なり、を成立させたというのか。レアル・マドリード戦ではそれが大当たりした。何度となく、キリアン・エムバペをオフサイドの罠に捕らえ、サンティアゴ・ベルナベウで0-4と凱歌をあげたのだ。 しかし、その後に対戦するチームは、徹底的にバルサの戦いを研究していた。オフサイドを警戒しながら、むしろハイラインの背後を狙う攻撃が活発化。そこに勝機を見出すようになった(チャンピオンズリーグでバルサが好調を維持できているのは、欧州レベルではまだ十分に対策ができていないのだろう)。