日銀の利上げ、実質賃金の持続的な上昇が必要-UAゼンセン永島会長
一方、賃上げによる人件費の増加は企業業績を下押しする要因ともなり得る。永島氏が会長を務め、イオングループ労働組合連合会は2年連続で40万人のパート労働者を対象に7%の賃上げで合意した。ただ、人件費増の影響もあり、同社の24年3-8月期営業利益は前年同期比16%減少した。
永島氏は「賃上げと業績が好循環しているところと、慣れてないがゆえにコストがかさみ利益を圧迫してるところもある」と指摘。コスト上昇分を付加価値につなげるため、労使が生産性向上にコミットすることが大事だと語った。経営側が「できない時に賃上げはしなくていいとなってはいけない」と述べ、従業員の生活防衛へ企業に責任ある行動を求めた。
ただ、企業にとって「為替は非常に大事なポイント」であり、足元の円安の影響で賃上げの勢いを維持するのが難しい企業もあるとの見方も示している。原材料を輸入する企業などは、ドル・円相場が足元の1ドル=155円の水準で推移すれば厳しい経営状態が続き、「ない袖は振れない」とも語った。
103万円の壁
「手取りを増やす」政策を訴えて先月の衆院選で躍進した国民民主党が求める年収「103万円の壁」の引き上げが、月内に策定される総合経済対策の焦点の一つとなっている。所得税や社会保険料などの負担が生じる「年収の壁」を巡っては、パート労働者らの就業調整につながるとしてUAゼンセンは以前から解消を求めていた。
9月に前任の松浦昭彦会長を引き継ぎ、UAゼンセンとしては初の女性会長となった永島氏は、国内のパート労働者の大半が女性であることから、この上限が男女間の賃金格差の一因となっているとも指摘。「私たちは性別、国籍、学歴に関係なく、誰もが貢献できる社会を目指すべきだ」と語った。
日本スーパーマーケット協会の昨年の調査によると、就業調整を行っているパート労働者の8割が「103万円の壁」を意識している。帝国データバンクが実施した最新の企業アンケート調査では、「103万円の壁」引き上げに関して賛成は68%、反対は4%にとどまった。また、この壁自体を「撤廃すべき」の22%と「賛成」を合わせると、9割の企業が見直しを求めている。