「拒否すれば中学校生活に支障が…」被害者が悲痛な証言 教え子への性的暴行の罪に問われた元校長は一部否認
●「性的行為は勉強にも効果がある」
理科準備室への呼び出しは、「週に2日くらい」の頻度で続いたという。 Aさんは断りたかったが、「部活のメニューを打ち合わせしたい」などとAさんに声をかけたという。Aさんによると、周囲に友人達がいる中で声をかけられることもあり、「みんな納得する理由だったので、断りづらかった」と話した。 「部活のメニューを考えるのかと思っていったのに、(性的な行為をされるので)やっぱりこうなるのかという気持ちになりました」 こんなこともあったという。練習試合の帰りに被告人から「学校に来ていない生徒の様子を見に行こう」と言われ、Aさんだけ残されたこともあった。「その後、その生徒の家には行かず、ラブホテルに連れて行かれました」 またある時、被告人は性的行為について、「こういう行為は勉強にも効果がある。勉強とは違う脳の部分を使うことで、勉強にも効果が出る」と説明したこともあったという。Aさんは「理科の先生が言っていることなのだから、本当なのかと思いました」とふりかえった。 撮影された動画の中で、Aさんが被告人と会話していたと弁護人から指摘を受けたが、Aさんは、「その場に合わせて会話していました。無駄な抵抗をしないでさっさと終わらせたかった。とにかく早くこの時間が終わりますようにと思っていました」と説明した。 ただし、Aさんは呼び出しを受けた際にはできるだけ嫌な顔をするなど「できる限りの抵抗」はしていたという。 Aさんはなぜ親や周囲に相談しなかったのか。「自分がされたことを説明するのが恥ずかしかったです。説明できたとしても、親は悲しむだろうし、学校全体の大ごとになってしまうと不安を感じました」と答えた。
●「自分と同じような被害者が出ないように」
起訴内容にあった14年前のことについて検察側から聞かれると、「その日はされたことの程度がひどかったと記憶しています。引き裂かれたような痛みもありました」とAさんは証言した。 一連の行為により、Aさんの中で、被告人は「尊敬する先生」から「軽蔑する、心底嫌な人」という存在に落ちていったという。証言の中で繰り返されたのは、Aさんから被告人に好意を寄せたことがなかったということだ。 卒業後は、「辛い記憶」として思い出さないようにしていたというAさんが、法廷で証言しようと思ったのは、Bさんのことを知ったからだという。 報道によると、被告人が逮捕されたのは、Bさんが東京都の教師による性暴力について相談する窓口に相談したことがきっかけだった。被告人がAさんの動画を所持していたことから、去年の夏に警察からAさんに連絡があり、自分以外にも同じような被害者がいたことを知ったという。 被害を打ちかける気持ちになったのは、「今後、私と同じようにつらい思いをする人が出たら嫌だなと思ったからです」とAさんは語った。 長年勤めた教職を懲戒解雇となり、現在はビル清掃の仕事に就いているという被告人。「2度と子どもに関わる仕事はしない」と弁護人は述べた。 最終的に法廷がどう判断するにしても、被告人が失った教え子たちからの信頼は、2度と戻ることはないだろう。