【金融界騒然の手記】371億円の詐取がリーマン・ブラザーズにバレた日、「共犯者の男」は妻子を連れてきて私に「最後の晩餐」を迫った【リーマンの牢獄】
---------- 2008年9月、アメリカでサブプライムローン(低所得者向けの住宅ローン)が崩壊し、大手投資銀行リーマン・ブラザーズが破綻した。世界金融危機「リーマン・ショック」の直前、リーマン・ブラザーズから総額371億円にのぼる莫大なカネを騙し取った凄腕詐欺師(懲役15年)がいる。齋藤栄功だ。 【本人写真】批判は覚悟している…リーマンから371億円を騙し取り、懲役15年 このほど「リーマン・ショックの引き金を引いた男」齋藤の回顧録『リーマンの牢獄』が、いよいよ5月16日に出版される。2024年最注目の巨弾ノンフィクションに、知られざる現代史の裏側が赤裸々に記録される。(文中敬称略) ----------
「10億円で検察の動きを止めてみせる」
齋藤栄功(しげのり)をはじめとする詐欺グループは、リーマン・ブラザーズ日本法人から5回にわたって合計371億円の架空融資を引き出した。そこから始まった齋藤の逃亡生活は、さながらハリウッド映画の如き様相だ。 前回の連載でもご紹介したとおり、齋藤の身辺には投資顧問会社社長の黒崎勉(仮名)というキナ臭い人物がうごめいていた。逃亡生活の端緒から、黒崎は毎日齋藤に電話をかけてきた。 〈「彼は警察や検察の動きを逐一把握していると言ってました。検察内部にも派閥があって、その派閥を逆手にとって情報を引き出せる、とね。忘れられないのは〈裏金で10億円用意してくれれば、齋藤さんがしたことは無かったことにできる〉と持ちかけてきたことですね。彼の背後にはそれなりのブレーンがいるんだと思いました」 (略) 「検察内はすべてバランス・オブ・パワーなんだそうです。一方の派閥の失態は、敵対する他派閥の応援歌となるので、黒崎氏がゲンナマを使って巧みに操作するというのです。しかし条件が一つあるという。マスコミに出る前にゲンナマを用意しろという条件でした。 メディアは、カネではどうにもならない唯一の力なんだそうで、マスコミが書きだしたら、もう蓋をするのは難しくなる。検察内部の懐柔より困難だからという理由でした」〉(『リーマンの牢獄』292~293ページ) いかにも詐欺師然とした説明だ。東京地検特捜部の捜査を無理やりストップさせるにあたり、黒崎は中国共産党指導部のコネクションを使うと吹聴したらしい。 〈「1週間やそこらで10億円なんて用意できるはずもない。タイムアウトでした。彼の黒幕が誰かを聞き出すこともできなかった。日本の政治家の名前は出ていません。出たのは胡錦濤やら毛沢東やらです」 (略) 「思わぬ仲間を得たと錯覚することになったんです。検察まで懐柔できる心強い仲間がいると思うと安心でした。毎日電話をかけてくれる人が、唯一無二の友人に思えました」〉(『リーマンの牢獄』293ページ)
【関連記事】
- 《はじめから読む》GSとリーマン 投資ファンドを手玉に取る手口を教えよう…『リーマンの牢獄』が出版前からヤバすぎる理由
- 《本人インタビュー》批判は覚悟している…リーマンから371億円を騙し取り、懲役15年を食らった男が獄中で綴った「書籍の中身」
- 【バブルの証言】「架空の丸紅部長」に変身した元白バイ隊員…リーマン・ブラザーズはこうして騙された【話題作「リーマンの牢獄」を先行公開】
- 【これは実話です リーマンを破綻させた男の手記】追い詰められた男のマネー・ロンダリングのヤバすぎる手口…裏ガネの作り方を教えよう《5億円分の札束を輪ゴムで止めて》
- 【実話】「胡錦濤」の名を騙る日本人詐欺師が主催した「六本木ヒルズ乱行パーティ」の壮絶実態のすべて