韓国の戒厳令は最悪の時期に出た最悪の秘策 今年の民心は「軍イコール悪」 ソウルからヨボセヨ
韓国の戒厳令騒ぎに接しすぐ頭に浮かんだのがノーベル文学賞を受賞したハン・ガン氏の代表作『少年が来る』と、観客動員1300万人を突破した超ヒット映画『ソウルの春』だった。今年、韓国で最大の関心を集めた文学と映画で、いずれも過去の戒厳令時代の政治的事件を背景に強烈な軍部批判が描かれた作品だった。 【写真】国会前で韓国の尹錫悦大統領の退陣などを求める人たち したがって今年の韓国の民心は〝軍イコール悪〟のイメージで満たされていたのに、突然、戒厳令!ときたのだからこれは完全にアウトである。尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は〝野党横暴〟に業を煮やし、政治的苦境突破の秘策として軍を動員した戒厳令で野党勢力封じ込めを狙った。時代錯誤的な発想もさることながら「軍ノー」という民心がまったく読めていなかったのだ。 今回の戒厳令騒ぎで海外メディアに「大統領によるセルフ・クーデター」という評があった。本来のクーデターは軍が政治指導者を追放し政治の実権を握ることだが、今回は逆に政治指導者が政争打開のため軍を利用した。野党陣営は「大統領による親衛クーデター」と非難している。 いずれにしろクーデターは成功すればヒーロー視され世論の評価を受けることもあるが、失敗すれば首謀者は反逆者とされ、断罪・投獄となる。今回の軍はむしろ被害者だろう。(黒田勝弘)