甘くしっとり、魅力香る国産小麦 高タンパクのメリット生かして続々と商品化
輸入小麦が円安の影響で依然割高となるなか、国産小麦の需要が高まっている。全国の収穫量の約6割を占めるのが北海道だ。国産にタンパク質豊富な品種が定着し、これまで輸入小麦を使ってきた有名店も、パン作りに用いるようになった。国も生産性の向上に力を入れる国産小麦の魅力とは-。 川崎市にあるパン店「FUJIMORI鷺沼店」。本格的なフランスパンを日本に普及させたフランス出身のパン職人、フィリップ・ビゴ氏の一番弟子で、「現代の名工」にも選ばれた藤森二郎さん(68)が35年前に開いた名店だ。 今月、国産小麦を使った新たな食パンが、併設カフェのメニューに登場した。食べてみると、きめが細かく、しっとりとしていて、嚙(か)むとほのかな甘みを感じる。 ■美瑛産は高品質 「春蒔(ま)き小麦『春よ恋』を主体に配合された北海道・美瑛町産の小麦の粉を使っています。生クリームを加えて生地に滑らかさを出し、『生食パン』のように仕上げています」と鈴木孝康シェフ(40)は説明する。 ひと昔前までは、「国産小麦は使いにくかった」という。輸入小麦に比べてタンパク質の割合が低いため、こねても弾力と粘りのもととなるグルテンが十分に形成されず、ふっくらとしたボリューム感のあるパンにならなかった。 各産地で改良が重ねられ、近年は春よ恋をはじめ、高タンパクの小麦が安定的に生産できるようになった。特に、美瑛産はタンパク質の含有量が高いことで知られる。春よ恋の場合、平成29年から5年間の平均タンパク値は13・5%で、北海道産全体では12・9%。一般的にパン作りなどに使われる強力粉は、11・5~13%程度だ。 国産小麦の使用を決めたのは、二郎さんの次女で、同店を展開するFUJIMORIグループ(東京都目黒区)代表、藤森もも子さん(36)だ。 今年6月に美瑛の小麦畑へ足を運んだときのことを、こう振り返る。「いい小麦を使うのは、農業を支えることにもつながる。これからのパン屋に何ができるのか、を考えるきっかけになりました」 食パンは今後、持ち帰り用の販売も開始予定で、パン以外にも、パウンドケーキ、サブレなど、続々と商品化を進めている。