世界の宝、済州の宝…済州の中の海女文化を探して(1)
豊かな土壌には恵まれず厳しい自然環境の中で家族を守るために強くならなければならなかった済州(チェジュ)の女性の物語は韓国国内ではもちろん世界も認める文化になった。最小限の道具だけを利用したエコフレンドリーな海産物の採取を続ける済州の海女(ヘニョ)の文化は、弱者に対する配慮、公益に対する献身と参加、自然と共存する暮らしなど、人類社会が目指すべき価値を私たちに教えてくれている。 このため済州の海女の強靭(きょうじん)な精神と物語を融合させた文化の足跡を辿ってみることも貴重な人生の経験になるだろう。 海中でサザエやアワビ、ウニ、ワカメなどの海産物を採取する海女は世界中を探してみても韓国と日本だけにしか存在しない。韓国海女の本山は済州だ。19世紀末から釜山(プサン)・蔚山(ウルサン)・巨済(コジェ)・統営(トンヨン)に遠征し始めるようになった済州の海女は、韓国各地はもちろん、日本やロシア・ウラジオストク、中国・大連と青島などに進出した済州の女性の話は、いまや韓国はもちろん、世界も認める文化になった。 2015年第1号国家重要漁業遺産、2016年国連教育科学文化機関(ユネスコ)人類無形文化遺産、2017年文化財庁国家無形文化財指定に続いて2023年世界重要農業遺産にも登録されて、国内外の遺産登録4冠を達成した。 今日まで脈々と続いた済州の海女の力強い物語を融合させた文化空間が済州の至るところに残っている。 「海女と文化、海女についてのすべてが分かる場所」 -海女博物館 「済州の海女」のことを考えると思い浮かぶイメージはさまざまあるが、テワク(海女が使用する円柱形の浮き)だけを頼りに体ひとつで荒くれる海に飛び込んで海産物を採取する済州の海女の姿は、昔から外部の人々の耳目を集めて驚嘆させてきた。 済州市旧左邑(クジャウプ)に位置した「済州海女博物館」は済州の海女の暮らしと文化を紹介する主要文化施設で、観覧客に済州の海女が受け継いできた漁業活動や海女文化を体系的に伝えている。 海女博物館は海女を主題に、海女の生活風習、巫俗信仰、歳時風俗、海女共同体だけでなく、済州民の歴史や女性、生業、経済、海洋、信仰、演劇など済州の伝統文化を総網羅して展示している。 博物館内外の展示物はすべて海女が寄付したもので、展示館の中には寄付を受けてここに移築された実際の海女の家もある。 特にムルジル(海女漁)のための核心道具であるテワクマンサリ(浮きと網)と海産物採取のためのピッチャン(磯ノミ)などのシンプルな道具はエコフレンドリーな作業過程の一面を教えてくれている。 海女博物館前の庭園は、海女抗日運動であり韓国最大規模の女性抗日運動である1932年1月デモに参加した海女の2次集結地だった。ここには海女抗日運動精神を称えるために済州の海女抗日運動碑が建てられていて、済州女性の生きることに対する強い意志も感じることができる。 -海の恵みを受けた一膳、「海女の台所」 海を生活の基盤とした海女の物語をもっと知りたいなら、「海女の台所」に行ってみよう。海女の台所は海女の精神が宿った食文化を紹介するところだ。 「海女の台所」終達(チョンダル)店は海女の暮らしを描いた演劇をのすぐ近くで楽しみ、海女が自ら採ってきた海産物を味わうことができるビュッフェ式の食事が出てくる、トークショーを兼ねた海女公演が目玉だ。 「海女の台所」北村(プッチョン)店は海女の休息空間「プルトク」(暖を取って体を温めたり、着替えをする場所)を形象化した空間だ。プルトクテーブルの上に海女の時間が感じられる料理がコース別に出てくるほか、曲線に波打つメディアマッピングウォールには海女の海中世界が繰り広げられる。プライベート空間で14人だけのためのコース料理を楽しめる点は、終達店にはない差別化されたサービスだ。 海女の台所に登場する海女はそれぞれ異なる背景を持っているが、彼女たちは皆、一様に自分ではない誰かを育てた個人の歴史を持っている。 済州の海女が自ら採ってきた食材料をふんだんに使った一皿を食べ終わるころには、自分ではなく家族のために海という台所と謙虚に向き合ってきた彼女たちの心をさらに深く理解できようになるだろう。