塚本晋也監督インタビュー ~戦後の闇市を生き抜く人間を描いた「ほかげ」について語る~
Q:「ほかげ」を作ったことで、監督の戦争に対する想いは一区切りついたのでしょうか? ―― 実は「野火」よりさらに強烈な、戦場を描いた戦争映画を企画していたんですが、コロナ禍や諸事情が重なって、どうしてもクランクインできなかったので、しびれを切らして、その後にやろうとしていた「ほかげ」を先に作ったんです。だからその戦争映画を作らないと、ちょっと戦争に関して自分の中では終われない感じがありますね。 Q:今回のBlu-rayとDVDには特典映像も付いていますね? ―― 映画を体感した人が、もっと当時のことを知りたいと思ったときに、いろんな角度から見られる特典を用意しました。DVDには『初日舞台挨拶』、『海外映画祭風景』、『予告』などの映像が収録されていますが、Blu-rayには他にも、当時の闇市の全体像が分かる『浮浪児1945 戦争が生んだ子供たち』という本を書かれた作家の石井光太さんと僕のトークイベントの模様や、戦争と精神医療の歴史を専門に研究されている歴史学者の中村江里さんに僕がお話を聞いて、戦争とPTSDのことに関して問題提起したトークイベントの映像も収録されています。あとは音声コメンタリーで、僕が映画の様々なことを説明していますから、より作品のことを多角的に知っていただけると思いますね。 文=金澤誠 制作=キネマ旬報社
【塚本晋也】 1960年1月1日、東京・渋谷生まれ。14歳で初めて8ミリカメラを手にする。87年「電柱小僧の冒険」でPFFグランプリ受賞。89年「鉄男」で劇場映画デビューと同時に、ローマ国際ファンタスティック映画祭グランプリ受賞。以降、国際映画祭の常連となり、その作品は世界の各地で配給される。世界三大映画祭のヴェネチア国際映画祭との縁が深く、「六月の蛇」(02)はコントロコレンテ部門(のちのオリゾンティ部門)で審査員特別大賞、「KOTOKO」(11)はオリゾンティ部門で最高賞のオリゾンティ賞を受賞。「鉄男 THE BULLET MAN」(09)、「野火」(14)、「斬、」(18)でコンペティション部門出品。本作「ほかげ」はオリゾンティ・コンペティション部門へ出品された。俳優としても監督作のほとんどに出演するほか、他監督の作品にも多く出演。2002年には「とらばいゆ」(01/大谷健太郎監督)、「クロエ」(01/利重剛監督)、「溺れる人」(00/一尾直樹監督)、「殺し屋1」(01/三池崇史監督)で毎日映画コンクール男優助演賞を受賞。同コンクールでは15年に「野火」で監督賞・男優主演賞をW受賞、19年に「斬、」で男優助演賞を受賞している。その他出演作に「沈黙ーサイレンスー」(16/マーティン・スコセッシ監督)、「シン・仮面ライダー」(23/庵野秀明監督)。NHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』(19)などドラマにも多数出演。
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