世界初!廃棄物から洗剤成分“セスキ”を合成 成功したのは高校生 地域のゴミ問題解決の研究が世界から高評価
愛媛の高校生たちが、捨てられるゴミから“油汚れに強い洗剤”として知られる「セスキ炭酸ソーダ」を作り出すことに成功した。世界から注目される画期的な研究で目指すのは「大量に捨てられるゴミの有効活用」だ。 【画像】廃棄物から生成したセスキの結晶
地産地消でセスキ洗剤合成を目指す
「セスキ炭酸ソーダ」とは、「セスキ炭酸ナトリウム(NA2CO3・NAHCO3・2H2O)」とも呼ばれる弱アルカリ性の洗剤で、酸性の頑固な油汚れや手あかや皮脂など、タンパク質の汚れを落とす一方、環境への負荷が少なく、台所掃除の定番として注目されている。 愛媛県立西条高等学校の科学(化学)部顧問である大屋智和教諭は、「セスキというのは輸入に依存して、アメリカから輸入していますが、それを“地産地消型”でゴミの中からセスキを作り出す、地産地消のセスキ洗剤合成を目指しています」と話した。 実は、市販されているセスキは天然の鉱石から作られていて、西条高校で行っている廃棄物からの生成は世界でも初の試みだ。 そもそも科学部の高校生たちがこの研究に取り組んだきっかけは、“地元・西条のゴミ問題の解消”だった。 愛媛・西条市で市民1人が1日に出す生活ゴミの量は731グラム(令和4年度)で、愛媛県内でも東予地方の3市は特に多く、いずれも全国平均を100グラム以上も上回るゴミを排出している。
紙おむつからセスキの合成に成功
2021年、部員らはまず西条市内の保育園から出る、使用済み紙おむつの焼却灰を有効利用する方法を模索し始めた。 紙おむつを作る大手日用品メーカーや大学などからアドバイスをもらいながら、その焼却灰に最も多く含まれる「炭酸ナトリウム」に着目した。 科学部で、セスキ合成班のリーダーである2年生の石川美空さんは、「私たちで3年目になるんですけど、1年目の先輩たちが最初から洗剤(セスキの生成研究)に決めたわけじゃなく、化学式を解いていくうちに『洗剤ができるんじゃない』って、ひらめいたことから始まっています」と、セスキの生成研究のきっかけについて話してくれた。 先行する研究で、炭酸ナトリウムからセスキが合成できることはわかっていたものの、純粋なセスキを生成するのは簡単ではなかった。 石川さんと同じセスキ合成班で3年生の玉井涼さんは、反応液から取り出した結晶を見ながら「主成分が重曹になるんですけど、おそらくここに僕たちが合成したセスキが含まれているのではないかと考えられます」と話す。 部員らは試行錯誤を繰り返しながら、ついに、セスキの合成に成功した。 合成したセスキを顕微鏡で見ると、セスキ特有の針状の結晶が確認できる。