緊急対談・西田亮介×安野貴博 なぜ「マスゴミ」は石丸・玉木・齋藤現象を予測できなかったのか…!
パワハラ疑惑の齋藤知事の再選で波紋を呼ぶ兵庫県知事選。一部には「有権者がネットのデマに騙されただけ」との論調もあるが、果たして本当なのか? 選挙結果を左右するネット戦略の最前線を社会学者の西田亮介氏と、AIエンジニアの安野貴博氏が語る。 【写真】再逮捕された「美人すぎる市議」の写真集全カット…
知らぬ間に偏っていく
西田:今回のテーマは「ネット選挙」とのことですが、安野さんも今年の東京都知事選に立候補して注目を集めましたね。33歳で支持基盤もないなか、AIエンジニアという肩書を活かし、「テクノロジーで政治を変える」というスローガンを掲げて、15万票を獲得。5位に食い込みました。 その安野さんが11月13日、東京都のアドバイザーに就任されたと伺い、とても興味を持ちました。行政のデジタル化に取り組むとのことですが、具体的にどのようなことをするのでしょうか。 安野:正確に申しますと、都そのものではなく、「GovTech東京」という都の外郭団体がありまして、そこのアドバイザーに就任しました。私がやりたいのは、都で集めた膨大な数の意見をAIで分析・可視化することです。SNSなどで都民の声を集めて、集約した意見の全体像をマップのような形で「見える化」します。 昨今のSNSでは、ユーザーの好みや興味に合わせた情報が優先的に表示される「フィルターバブル」と呼ばれる現象が起き、誰もが自分と同じように考えていると錯覚してしまうことがあります。でも多様な意見を集めたマップを参照して、自分の見ていた世界が全体のごく一部だったと気づければ、意見が違う人たちとも、より建設的な議論を進めていくことができると考えています。
斎藤元彦知事はなぜ勝てたのか?
西田:大変興味深い試みです。さきの兵庫県知事選では、新聞やテレビでさんざん「パワハラ疑惑」を追及されてきた齋藤元彦知事が再選し、世間に大きな衝撃を与えました。「齋藤支持」と「アンチ齋藤」で意見が真っ二つに割れたのは、フィルターバブルが影響したとも言われていますね。 安野:まさにおっしゃるとおりです。今回の兵庫県知事選でみんなが気になっていたのは、「実際、齋藤さんっていい人なの?それとも悪い人なの?」ということでしょう。ところが、選挙期間に入るとマスメディアでは「中立性」を掲げてパワハラ疑惑に関する報道がピタリと止まった。 そうなると一番気になる情報を得るにはインターネットを見るしかない。そこには有象無象の情報が大量に転がっていて、クリックすると次々と「オススメ」に表示されます。齋藤知事ご本人は、SNSが得意ではないそうなのですが、NHKから国民を守る党の立花孝志党首や、PR会社社長の折田楓さんなどが発信したとされる情報がネット上で広がり、勝手連的に応援する人が増えていきました。