女子ブラインドサッカー・内田佳が伝えたい「余暇としても楽しめる」魅力。インド一人旅で変わった競技への思い
女子スポーツの競技登録者数は、高校卒業後に大きく減ってしまう課題がある。スポーツ用品を手がける株式会社モルテンは「好きなことを続けよう。スポーツを続けよう」をスローガンに、「KeepPlayingプロジェクト」をスタート。さまざまな形で競技を続けるアスリートのエピソードを伝えている。アルビニズムで先天性弱視の障がいを持ち、東京都世田谷区にあるブラインドサッカーチーム「スフィーダ世田谷BFC」でプレーする内田佳選手は、23歳の時に一度競技から離れた。その後、「もっと世界を知ろう」と、世界一周をする中で、インドでの経験が復帰への原動力になったという。異国の地で目にした「日本では考えられない」競技風景とは? 視覚に障がいがない人も余暇として楽しめるブラインドサッカーの魅力についても語ってもらった。 (インタビュー・構成=松原渓[REAL SPORTS編集部]、写真提供=日本ブラインドサッカー協会)
「寝ても覚めてもブラインドサッカー」。ピッチでは“自由になれる”
――内田選手は東京都世田谷区にある「スフィーダ世田谷BFC」というブラインドサッカーチームでプレーされているんですね。ブラインドサッカーの魅力はどんなところだと思いますか? 内田:自分の得意なことと仲間の得意なことを生かし合うプレーや、ピッチの中を走り回って、仲間と一体になった時の爽快感です。自分がイメージしていたプレーと、映像を見た時のプレーが合致したときはうれしいですね。もう一つは“自由になれる”感覚です。普段、目が見えている方に何かを説明してもらうとき、たとえばお店でメニューを見ると「これおいしそうだよ」とその方の主観が入ることも多いのですが。ブラサカの試合の中では、そういうこともすべて自分で判断しなければいけないので、難しさはありますが、そのぶん自由になれる感覚があるんです。 ――スフィーダ世田谷BFCでは、どのようなスケジュールで仕事と競技を両立されているのですか? 内田:普段は、NPO法人日本ブラインドサッカー協会に勤務しています。仕事もブラインドサッカーなので、寝ても覚めてもブラインドサッカーという状態ですね(笑)。練習は週1回で、日曜日の午前中が多いです。選手兼マネージャーも務めているので、事務的な仕事もありますし、試合ではセンターガイドも務めているので、試合中にピッチの様子を伝えたりとか、タイムアウトの時に選手に飲み物を渡したり、「今のプレーがどうだったか」というフィードバックなどもしています。 ――ひとり何役もこなしているんですね。好きなプレーや、喜びを感じる瞬間はどんな時ですか? 内田:得意なのは、ディフェンスとボールクリアです。チームの仲間は初心者がほとんどなので、自分が周りに合わせて動くことが多いのですが、セットプレー時に仲間に声を掛け合いながら陣形をうまく作って、良いプレーができた時はすごくうれしいですね。 ――守備時には、ボール保持者に対して衝突を避けるために「ボイ!」という声を掛けていますが、守備ではどんなことを大切にしていますか? 内田:対戦相手は男性が多いので、その人よりも自分が重心を落とすことや、「押す」、「引く」のタイミングは自分の強みだと思っています。 ――ブラインドサッカーは鈴の音がするボールやガイドの存在など、特徴的なルールがいくつかありますよね。初めて見る人には、どんなポイントに注目して見てほしいですか? 内田:ピッチはフットサルと同じサイズで、サイドライン上に約1mのフェンスがあります。選手は5人で、アイマスクをつけた4人のフィールドプレーヤーと、見えているゴールキーパー、自分たちが攻めるゴールの後ろにいるガイドが情報を伝え合って、連携して得点を目指します。転がると鈴の音が鳴るボールと仲間の声を頼りにプレーをしていて、視覚に障がいがある人と障がいがない人がお互いに声を掛け合いながら行うスポーツです。 ガイドや監督、ゴールキーパーからの声だけでなく、アイマスクをしている選手から「こうしてほしい」と指示を出す場面もあるので、そういうところにぜひ注目してほしいですね。