香ばしいニンニクのトッピングで食感が楽しい「山田宏巳シェフのペペロンチーノ」レシピ【俺のペペロンチーノ】
おいしい物が何も入っていないからこそ 手間をかけて食感を追求したペペロンチーノ
私が最初に心からおいしいと思ったペペロンチーノは、「リストランテ アルポルト」の片岡シェフのペペロンチーノでした。アルポルトがオープンしたてだった当時、一生懸命お金を貯めて行ったお店で「ペペロンチーノとスズキのグリルをください!」と注文したのを、今でもはっきり覚えています。テーブルまで片岡シェフが来て、優しく「はい」と言ってくださいました。そのとき食べたペペロンチーノが本当においしくて。私の大事なペペロンチーノの思い出です。その後片岡シェフと親しくさせていただき、ボンゴレをごちそうになったことがありました。また感動して、その後2年くらいはボンゴレに真剣に向き合っていました。まだ私が22歳くらいのときの話です。ペペロンチーノって、おいしい物が何も入ってないですよね。オリーブオイルとニンニクと唐辛子だけ。だけどおいしいし、それがベースになっている。ボンゴレもベースはペペロンチーノですから。おもしろいですよね。 私のペペロンチーノはから揚げしたニンニクがたくさんトッピングされていますが、このニンニクの食感がいちばんのこだわりです。機械を使わず、手で丁寧にみじん切りすることで、大小さまざまなサイズに刻まれる。揚げるとカリカリっとしたり、カリホクっとしたり、味はもちろんですが食感を楽しむことができるんです。ただこの食感を作り出すには、かなり手間がかかります。今回のレシピでもわかるように、刻んだニンニクを水にさらすことで余分な糖分を取り除く=苦みを取り除き、弱火でじっくりと焦がさないように火を入れたり止めたりと、中から水分だけを抜くように、丁寧にニンニクに付き合います。強い火で揚げると、表面の水分しか抜けません。刻んで小さくなったニンニクでも同じで、強火で揚げると外はカリカリでも中はべちゃっとしてしまう。ペペロンチーノはシンプルなパスタだからこそ、私はこの食感をとても大事にしているのです。 イタリア料理の基本は塩とオリーブオイルで成り立つと思っています。私の料理にはハーブはあまり使っていなくて、肉料理や煮込み料理にナツメグや月桂樹を加えることもしません。確かにいい香りがしますが、その香りが必要でなければ入れなくてもいい。臭みを消したいなら、臭みのない食材や臭みが出ないような下処理をすればいいんです。だんだんと引き算の料理、イタリアンなのに和食みたいになってきちゃいました。ただの焼き魚にオリーブオイルと塩をかけるだけ。これが本当においしいと感じています。だからこそイタリアの食材にもこだわっていなくて、できればいずれはすべて国産の食材でイタリアンを作りたいと考えているんです。今、私は生ハムも作っているのですが、この生ハムはトウキョウXという東京で育てられた豚のお肉で作っています。この生ハムは本当においしくて、イタリアの生ハムを超えたと感じています。日本は魚介も新鮮、バジルの代わりにシソを使ってもいいし、和パセリだってすごくおいしい。あとはオリーブオイルとパルメザンチーズがたくさん生産されるといいですね。すべて国産の材料でイタリアンを作る、これが今の私の夢です。 * * * 俺のペペロンチーノ 鉄人シェフ18人が作る基本&アレンジレシピ 監修/Chef Ropia 登場シェフ/落合 務、小川洋行、奥田政行、小倉知巳、片岡 護、Chef Ropia、神保佳永、鈴木弥平、濱崎龍一、 日髙良実、ファビオ、山田宏巳、山根大助、弓削啓太、大西哲也、関 斉寛、山野辺 仁、坂井宏行 玄光社 2,420円
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