「被害者」擁護の共感、「推し活」心理が拡散…兵庫県知事選では「ファンダム」形成か
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「斎藤さんの姿が自分に重なったんです」 【ひと目でわかる図解】一般的なファンと「ファンダム」の違い
兵庫県知事選が中盤を迎えた今月11日。神戸市東灘区で行われた斎藤元彦氏(47)の街頭演説で、聴衆の整理をしていた女性(53)は、陣営のボランティアに参加した理由をそう明かした。
女性は5年ほど前、職場でうそのうわさを広められ、退職に追い込まれそうになった。パワハラなどの疑惑で、テレビで批判された斎藤氏を見て当時を思い出した。SNSで調べ、「斎藤さんが陥れられた」と考えるようになった。
「メディアが斎藤さんを批判するのは、裏で大きな力が働いたからだと思う」
ボランティア
斎藤氏を支えたのは、SNSを通じて集まったボランティアたちだった。
ボランティア代表で「五条祐介」の名前で活動する同県明石市の男性(65)によると、斎藤氏が失職してから2日後の10月2日、斎藤氏が駅立ちしていた現場で会った約10人が始まりだった。陣営から独立したLINEグループを作り、X(旧ツイッター)でボランティアを募った。
その結果、街頭演説で聴衆誘導や撮影などを担う現場ボランティアが約500人、動画などを編集してSNSに投稿するデジタルボランティアは県外を含め約400人集まったという。
五条氏は「斎藤氏に関する報道に不満を持っている人が多かった」と明かす。
SNSを通じたボランティアの拡大は、7月の東京都知事選で次点となった前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏(42)に関してもみられた。
斎藤氏と共通するのは、構図のわかりやすさだ。
石丸氏は市長時代、市議会との対立で注目され、都知事選で「古い政治との決別」を強調した。斎藤氏は県議会から全会一致で不信任を突きつけられたことで、「いじめられた被害者」との構図で受け止められた。
立候補した「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏(57)が、斎藤氏を擁護すると、そうした見方が加速した。
斎藤氏の演説でも「頑張っていれば誰かが見てくれる」と感情に訴えかける言葉が徐々に目立つようになった。