長野県「淫行条例」7月1日に成立へ 罰則規定の削除求める声も
長野県で条例化の是非が論議となっていた青少年との性行為を処罰する「子どもを性被害から守るための条例案」は、県が6月定例県会に提案後、29日の委員会で「可決すべきもの」と決定。県会最終日となる7月1日の本会議で可決、成立の見通しとなりました。長野県は全国で唯一、罰則規定のある条例によらず自主的な県民運動で青少年対策に取り組んできましたが、阿部守一知事はじめ県側の条例化の意志は固く、反対論を押し切りました。長野県で50年余続いた「条例によらない県民運動」が幕を下ろす見通しになりました。 【写真】唯一の非条例県 長野県が「淫行条例」制定にかじを切った背景とは 一方、長野県弁護士会は、この条例案の罰則規定について「青少年のまじめな恋愛を制約したり、当事者の一方的な被害申告で処罰される恐れがある」として条例案から罰則部分を削除すべきだとする柳澤修嗣(やなぎさわ・しゅうじ)会長の会長談話を発表しました。成立見込みとなった条例案は、こうした専門家らの指摘も含め、今後も論議が尾を引きそうです。
県側「自由な意思の恋愛は処罰対象ではない」
条例案を審議した県会の県民文化委員会は、28日に行った集中審議に続き、この日も罰則規定を問題とする議員が解釈などをめぐり県側をただしました。しかし平行線に終わり、採決。賛成多数で条例案を可決しました。7月1日の本会議でも可決の見通しです。 論議になっている条例案の罰則部分は「大人は18歳未満の子どもに対し威迫し、欺きもしくは困惑させ、またはその困惑に乗じて、性行為やわいせつな行為を行ってはならない」とし、違反した場合には、2年以下の懲役または100万円以下の罰金を科すとしています。このほか、保護者の依頼など正当な理由がないまま深夜(午後11時から翌日の午前4時まで)に子ども(18歳未満)を連れ出した場合は30万円以下の罰金としています。 同委員会は28日の集中審議で、条例化賛成議員らが「(取締条例のない)長野県では女の子と簡単に遊べるなどといわれているとも聞く。条例があったほうがいいという若者たちの声もある」と主張。これに対し問題点を挙げる議員は「真摯(しんし=まじめ)な恋愛は処罰対象にしないというが、真摯であるという判断はどこでするのか。捜査によっては冤罪を生む恐れがある」などと指摘しました。 これに対し県側は「自由な意思のもとでの恋愛が処罰対象になるとは想定していない」「警察が突然捜査を始めることはなく、まず関係者の事情をよく聴くことが前提になる」などと説明。また、県民運動については「条例と県民運動の両輪で青少年問題に取り組んでいく」としました。 また、関連の取り組みとして、性被害があった場合、速やかに対応する性暴力被害者支援センターを7月、県庁に設置。各地に15人の支援員を置き、警察、病院などと連携して迅速に対応するなど、条例を踏まえて総合的に取り組むと説明しました。 阿部知事は「条例制定を求める声は多い。性被害が出ていることと併せ、条例化は先延ばしできない」と強調。県側は過去2年間に県警が把握したケースとして、大人に脅されるなどして性行為に応じた青少年のケースが17件、20人に上るとし、これらは現行法では摘発できなかったことなども条例制定の背景として関係の会議などで提示してきました。 冤罪などの懸念に対し、同知事は「犯罪の構成要件を他県の条例より明確にした」「国民の権利侵害がないよう配慮するといった規定も盛り込んだ」と、そのおそれはないとの考えを強調してきました。