中南米「台湾断交」を選択した国、しなかった国
パラグアイとの断交は回避できたが(写真・駐台湾パラグアイ大使館HP)
中南米は台湾の承認国の多い地域であり、とくに米国に近い中米・ カリブ諸国 に集中している。国共内戦に敗れて台湾に拠点を移した中華民国は1971年に国連代表権を失い、以後世界の大部分の国と公式の関係を断った。しかし中華民国の事実上の存続を望んだ米国の意志のもと、国交を持つ国が一定数残り、2010年代半ばまで20数カ国で推移していた。均衡が保たれていたのは、米国の影響力に加え、20世紀終盤まで台湾の経済力が相対的に優勢だったからである。 ところが21世紀に経済大国となった中国が中南米にも進出し、また米国の影響力が徐々に減退するにつれ、この均衡が崩れ始める。2007年6月、コスタリカのオスカル・アリアス大統領は「ごく当たり前の現実主義」と述べて中国と国交を樹立し、台湾の承認国が並ぶ中米地域に風穴が空いた。この後、国民党の馬英九政権(2008~2016年)が対中融和を進めたことで外交競争もしばらく休戦となった。しかし中国が独立派と見なす民進党の蔡英文政権(2016年~)に交代すると、パナマ(2017年6月)、ドミニカ共和国(2018年5月)、エルサルバドル(2018年8月)、ニカラグア(2021年12月)、そして今年3月のホンジュラスと中国への国交切り替えが相次いだ。 さらに、4月の大統領選挙で台湾断交が争点となったパラグアイと、6月下旬に大統領選を控えるグアテマラで次なる断交が起こるかに注目が集まる。
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岸川毅