【MotoGP】大接戦のMotoGPで必要不可欠となっているビデオメトリーとは何か? 2024年には最高峰クラスの全チームが導入
百分の1秒、千分の1秒を争う競争の激しさとなっているMotoGP。その極限の争いを突き詰める中で、ビデオメトリーという技術が各チームに広まっている。今回はそのシステムがどんなモノかを見てみよう。 【ギャラリー】レプソル・ホンダ MotoGPマシン(1995~2023) このビデオメトリーというシステムがMotoGPで使われ始めたのは、2010年代に入ってからだ。しかし今では大きな広がりを見せており、2024年シーズンには最高峰クラスの全チームが同様のシステムを導入するなど必要不可欠な存在となっている。 ビデオメトリーのシステム概要は、コース場のある特定の地点……通常はコーナーとなるが、事前に決めたライダーの姿を記録し、それらの画像をソフトウェアで処理して重ね合わせることで、各ライダーの使っているラインが一目瞭然となり、ベンチマークとなる相手のラインをより楽に模倣することができるようになる、というモノだ。 motorsport.comにシステム概要を説明したMotoGPの元テクニカルチーフは、こうも語っている。 「一度画像を取得すれば、それらを分析するのは非常に簡単なうえに、非常に効果的だ。同じバイクに乗っているライダーの比較では特にそうだ」 最初にこうしてビデオをライダーのライン改善に用いたのは、ドゥカティのセルジュ・アンドレイという技術者だった。彼は2010年にドゥカティに加入する前に4シーズンにわたってシステムを開発し、さらにドゥカティでアンドレア・ドヴィツィオーゾの加入によってプログラムは完成に近づき、2013年末には形になった。 アンドレイがシステムを開発していた当時は、動くラインの画像を重ね合わせるソフトがなかったため、独自に開発する必要があった。 この技術に注目したLCRは、ステファン・ブラドルの成績向上を目指し、2014年にアンドレイと契約した。ただその後ブラドルはアプリリアへと移籍してしまった。 2015年、LCRにカル・クラッチローが加入するとビデオメトリー部門は成長しはじめ、マルク・マルケス(当時レプソル・ホンダ)の目にも止まるようになった。実際、マルケスはアンドレイの元を訪問するようになった。 また同時期にはスズキも日本人技術者と共に同様の技術を使い始めたが、そのエンジニアは独自の部門立ち上げを図ったホンダに引き抜かれた。 ただマルケスはあくまでもLCRにいるアンドレイの力を借りることを好んだため、ホンダの目論見通りとはいかなかったようだ。