【MotoGP】大接戦のMotoGPで必要不可欠となっているビデオメトリーとは何か? 2024年には最高峰クラスの全チームが導入
■ビデオメトリー技術者の話
2024年にグレシーニへと加入するマルケスは、引き続きアンドレイとの協力を希望し、彼自身の引き抜きやソフトウエアの買い取りも申し出ていた。しかしアンドレイはここ10年間を家族のように過ごしてきたLCRで、自らの秘密を守ることを選んだ。 またスズキで日本人技術者からビデオメトリーのポジションを引き継いだフランチェスコ・ムンゾーネは、このシステムについて次のように語っている。 「基本的に、これはトラックの特定のセクションでライダーを記録することによって構成されている」 「そして、それらを重ねることで異なる動きを確認でき、ライダーに自分の動きを見てもらうようにする。それが助けになるかもしれないんだ」 「元々は、もっと初歩的なモノだったが今ではソフトウェアプログラムが、フリーもしくはライセンスで存在している」 こうしたムンゾーネの発言はつまり、今ではMotoGPチームが映像の解析のために特定のエンジニアを必要としなくなっていることを意味している。だからこそチームは映像のレコーダーとその編集者、そしてビデオメトリーコーチを導入しているというわけだ。 2019年にヤマハはビデオの録画と編集の専門家であるダニエル・ボリーニを起用。その後、チームリーダー(当時はウィルコ・ズィーレンベルグ)がライダーと共に分析を担当するようになった。 チームはこのシステムを使い始めてすぐに、”コーチ”が必要だということを理解し始めた。例えばVR46ではロベルト・ロカテッリをビデオメトリーコーチとして配置し、ライダーと分析を共に行っていた。現在、ロカテッリはチームを離れ、Moto2などに参戦していたアンドレア・ミーニョが、ビデオ撮影やVR46のライダーコーチであるイダリオ・ガビラのサポートを担当している。 マルケスが加入したことで注目度が鰻登りとなっているグレシーニも、ビデオメトリーへの取り組みを行なっている。グレシーニでは125cc、250cc王者のマヌエル・ポジャーリを起用し、仕事を進めてきた。 ポジャーリの仕事ぶりはドゥカティも高く評価しており、2024年にはドゥカティファクトリーチームのビデオメトリーチームにテクニカルスタッフとして加わってグレシーニ、ドゥカティの両者と仕事をする予定だ。 プラマックも独自に人材を雇用し、そしてKTMとGASGAS、そしてアプリリア、トラックハウス(旧RNF)は同じ企業にビデオメトリーサービスを委託。これによってMotoGPクラスの全チームがビデオメトリーを活用する体制を整えている。 僅差の戦いが続いているMotoGPだけに、全チームが導入することになったこれらのシステムをしっかりと活用することが、ライバルに置いていかれないためにも重要となってきそうだ。
German Garcia Casanova