こんな映画は福田雄一にしかできない、有名俳優たちがふざけ倒す『聖☆おにいさん』
中村光による同名漫画を、「勇者ヨシヒコ」や「今日から俺は!!」などで知られる福田雄一が実写化した、ウェブ向けの短編ドラマシリーズ「聖おにいさん」が『聖☆おにいさん THE MOVIE ホーリーメンVS悪魔軍団』として、長編映画化された。 【写真】『聖☆おにいさん THE MOVIE ホーリーメンVS悪魔軍団』場面写真 もともと短編で丁度良い、シュールなギャグやスベリ芸が多く、長編に向かない構成ということもあり、それをどう長編に変換するのかと心配と期待があったが、やはり長編としてまとめるのには困難があったようだ。”映画らしさ”という概念をぶっ壊した脚本という点では、近年稀に見る狂気的作品だ。誤解を恐れずに言えば、物語の繋げ方が、力技にもほどがあり素晴らしい! 冒頭ではセルフリメイク・シーンが多く、ドラマ版では、会話の中で処理されていた地元の漫才コンテストがちゃんと映像化されていたり、「福引」のエピソードの過程がより鮮明になっていたりと、おそらくドラマ版を観ていない人用にベストエピソードを再度映像化しているのだろう。そのため、新たなエピソードは7~8割程度。 ただ、今作がドラマと大きく違っているというか、一番の映画らしさを感じる点は、基本的に2~3人構成の物語だったのに対して、出演者を大幅増量させていることだ。 そこで、やはり登場してくるのが、佐藤二朗や賀来賢人といった、福田組お馴染みの面々。福田組がふざけているのは見慣れているかもしれないが、岩田剛典や神木隆之介といった演技派俳優たちに、今後の活動が心配になるほど、ふざけさせているし、窪田正孝に関しては、セーラームーンやプリキュア風コスプレをさせられているのだから、ある意味では貴重映像のオンパレード。例えるなら、スベリ芸全開の「新春かくし芸大会」のようなものだろうか。 これも福田作品ではお馴染みかもしれないが、俳優が笑いをこらえてしまって、演技と素の中間的な駆け引きの極みのようなシーンが一カ所あって、それがとても長い。とにかく長い。しかし、その終わりそうで終わらない感じも嫌いにはなれない。