「当時の自分は異常だった」「でも、恋愛や就職を諦められず…」17年間“引きこもり”だった50歳男性が、大学に入学して社会復帰を果たすまで
自分がメディアに出ている姿を、障がいを持つ利用者とその家族に見てほしい
――支援員として働くなかで、意識していることはありますか。 糸井 利用者の方々のいいところを見つけて、それを肯定することですね。私自身、閉鎖病棟を出てから周りの人に「あれをしてはダメだ」「これをしてはいけない」と言われることはなかったし、常識に当てはめて否定されることがなかった。だから今の私がいると思っていて。 利用者の方々にも「あれをしなさい」「これをしなさい」と制限をかけることは言いたくないし、良いところも悪いところもすべて肯定したいと思っています。 ――糸井さん自身の経験をもとに利用者と接しているんですね。 糸井 あとは私が本を書いて、こうしてメディアに出ている姿を、障がいを持つ利用者とそのご家族に見てほしいとも思っています。 そうすることで、「しんどさを抱えている糸井さんも挑戦しているんだったら、私もやってみたい」という動機付けになればいいなと。
「ほら見たことか」「障がい者のくせに」と言われる怖さも…
――今年3月に自費出版した『スイングバイ 17年間の引きこもりを経て、社会復帰を目指し一歩ずつ歩み続けた今、伝えられること』(パレードブックス)は、第27回日本自費出版文化賞の特別賞作品に選出されたそうですね。 糸井 引きこもりだった私が本を書くことで、引きこもりや登校拒否の当事者、そしてその家族の痛みや苦しみ、不安を取ってあげたり、背中を押す手助けになるんじゃないかと思って。 生きづらさを抱える私の言葉や行動で、「できるか、できないか」ではなく「やるか、やらないか」が重要、というのが伝わってほしいです。 ――書籍を出版したことで、周りからの反響はいかがでしたか。 糸井 講演依頼も来るようになりましたし、周りからは「すごい」って言われます。私に期待してくれる人も増えました。 でもその分、怖さも常にあるんです。もし怠けたり、手を抜いたり、ミスをしたら、「ほら見たことか」「障がい者のくせに」と言われるんじゃないかと。それがイヤだから、必死に行動しています。
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