森発言に対し「わきまえない女でありたい」――稲田朋美議員に聞く、自民党という男社会
――Twitterに投稿した後、党内の空気感は変わりましたか。 稲田氏:日本社会のありよう、あるいは女性の政治参画、会議のありかたなど党内の議論がもっと活発になるのかと思いました。しかし、そうでもなかった。寂しいなと感じました。
森発言の背景
森会長の女性蔑視の発言はなぜ起きたのか。背景として指摘されるのは、政治の世界における圧倒的な男性優位性だ。一般企業は大きく変わりつつあるのに、政治の世界では男性優位の状態が長く続いていて、その延長として森会長の発言があるのではないか。森会長は、かつて自民党の派閥「清和政策研究会」の領袖で、稲田氏は現在そこに所属している。 稲田氏:私が国会議員になって16年、女性の国会議員はまったく増えていません。(衆議院で)1割という水準がずっと続いている。日本の総人口に占める女性の割合は約半分です。女性の意見が政策にもっと反映されてよいはずなのに、現実は違います。女性議員の数が少ないから、女性の意見は切り捨てても構わない、軽く扱っても構わない。そんな雰囲気を感じてきました。 日本のジェンダーギャップ指数は153カ国中121位です。経済界でも女性がトップに就くことがとても少ない。このことを言っても、党内で「大きなことだ」と捉えられたことはありません。
――自民党の部会や会議でも「男性優位」が続いているのでしょうか。 稲田氏:その場にいる女性議員がひとりだけ、という会議も珍しくありません。でもそれで発言を控えることは、私はしていないんです。議員を16年もやっていますので。けれども、各政策を議論する部会の前段階ですよね。その政策に詳しい議員たちが集まって大枠の方向性を決めてしまうことがあります。非公式な場ですね。納得がいかなければ後からひっくり返すこともできますが、意思決定のコアな部分に女性が入れていないな、とは感じます。 女性も入れて欲しいと、党に何度も提言をしてきました。ただ、満足な答えが返ってきたことはありません。「わかりました」「そうだね」とは言うものの、状況が変わることはありません。 ――男性優位の現場といえば、「夜の会食」もあります。コロナ禍以前は連日あるのが当たり前でした。夜遅くまでこういった場に出るとなれば、子育て中の女性議員にとっては負担です。 稲田氏:女性で議員になりたい人が少ない原因に、「育児と仕事の両立」があるのは間違いありません。そもそも、子育てをしている女性が政治家だ、という視点が当たり前ではない。衆議院の規則は2001年に改正され、議会の欠席届の理由に出産と明記できるようになりましたが、それまでは出産・育児を理由にした欠席届はなく、「事故」扱いでした。いまだに女性の出産を想定していない地方議会は少なくないようです。