木村カエラ「私自身が常に楽しく、関わる人も楽しくしてあげたい」デビュー20周年インタビュー
今年デビュー20周年。長年アーティストとして第一線で活躍し続けていることは誰が見てもすごい。 ▶︎すべての写真を見る だが同じくらいすごいのがずっと変わらないビジュアル、歌声、存在感……、つまり全部。ずっとチャーミングでちゃんと格好いい。 その秘密を探るべく食生活や睡眠時間、愛用しているサプリなど、あらゆる質問をしてみるも特別な答えは出てこない。「そうおっしゃっていただくのはありがたいんですけどね」と、子供みたいに笑う。 楽曲を筆頭に、ファッションやアートワークなど、木村さんの表現する世界観は個性的という小さな言葉では収まらない。 華やかななかに愛情と優しさが充満し、夢や希望に満ち溢れながらも、ときに透明な毒を伴う。 空想と現実の間に横たわる“木村カエラ”という世界の原風景は、アニバーサリー作品である「F(U)NTASY」というタイトルからも垣間見える。 「昔から不思議な世界を妄想するのが好きなんです。例えばお花が歌ったり、毛虫と喋れるんじゃないかとか、ずっと夢見ています。 年齢を重ねることで現実を知るわけですが、それでも私はその世界が大好き。 その思いをもって私自身が常に楽しく生きていたい、そして関わる人も楽しくしてあげたいという思いから、『FAN(TASY)』は、『FUN(=楽しい)』につながると思い『A』でなく、『U』にしました」。 20年間での変化について訊くと「ぜんぜん変わってないですね。ただ、いろいろなことを乗り越えてきたので大人にはなったと思います」と、改めて振り返る。 「デビュー当時は、人を信じることができませんでした。しかもそういう自分が好きになれない葛藤もあって。 でもいろいろ経験し、活動するうえで多くの人が関わってくれていることや、作品を通じてたくさんの人が喜んでくれていると思ったときに、自分が心を開かなきゃって思うようになりました」。
そんな木村さんにとってのFUN-TIMEについて訊いてみると、家族との物作りの時間だという。 「子供と一緒にやるタイダイ染めや編み物、あと最近はレジンをしている時間ですね。 レジンはジェルネイルに近い透明な樹脂で、着色をして型に流し込み、UVの光で固めるるもの。これまでプラスチックの小物入れやキーホルダーなどいろいろ作りました。そういう穏やかな時間がすごく楽しいです」。 CDのジャケットからツアーグッズにいたるまで、すべて自分でデザインを手掛けるほど、物作りへの思いはひとしお。それは、幼少期の経験が、表現者としての現在の活動に多大な影響を与えている。 「例えばバービー人形に着せたい服のイメージがあったら、フェルト生地を買ってきて母と一緒に作ったり、父とも段ボールを使って巨大な恐竜を一緒に作ったりして……。 両親の影響はすごく大きいと思います。何か欲しい物があれば買うというよりは、自分で作ることが多かったです」。 稀代のアーティストではあるが、家ではふたりの子供の母親。20年の間に多くの作品を生み出してきたが、それらの一部は意外なシチュエーションで誕生していた。 「キッチンのなかにあるガスコンロの端っこに小さな椅子を置いて、そこで歌詞を書いたりしています。 家事をしながら仕事をするとなると、全然時間が足りない。そこにはパソコンが常に置いてあって、料理をしながら曲を創ったり、全部そこでやっています」。 部屋に引きこもり、夜な夜な創作活動に打ち込むストイックな芸術家の姿を勝手にイメージしていた旨を伝えると「私ってどんな人なの!?」と笑い飛ばす。そんなイメージとは無縁なエピソードを披露してくれた。 「仕事と家の往復なので滅多にないですが、たまに外食をして人と話しているなかで『カエラちゃんはもっとこうしたほうがいいよ』とか、アドバイスをされたりして。その内容を次の日にマネージャーさんと共有して、実行することもあります。 自分自身をオープンにしているといろいろな人に出会うので、そういうときは自分を隠さず、なるべく多くの人と話すようにしています。 仲良くならなくても、喋っている会話のなかで相手の考えを知ることや、感じたり学んだりすることも多く、自分の創作の刺激になるんです。それはアーティストとしてはもちろん、ひとりの人間としても大事なこと」。