ニチバンの「ケアリーヴ」シリーズが絆創膏市場で売上数量1位を獲得できた理由
あのロングセラー商品はどのようにして生まれ、どのようにヒットをつづけてきたのか。その道のりをたどる「ロングセラー物語」。今回は、発売から27年となる、ニチバンの「ケアリーヴ」にスポットを当てる。現在のブランド担当者が商品の歴史と今を語る。 【マンガ】「憧れのタワマン生活」が一転…!残酷すぎる「格差の現実」 〔撮影:岡田康且〕 富田英樹さん とみた・ひでき/'73年、新潟県生まれ。学習院大学法学部卒業後、'94年にニチバン入社。営業を経て、救急絆創膏等の製品ブランドを担当。マーケティング部門の立ち上げメンバーに。
これは会社は本気だぞ、と思った
ニチバンが初めて救急絆創膏を発売したのは、'48年でした。'75年には「オーキューバン」を発売。私は入社後、営業としてこの商品を扱っていましたが、競合が圧倒的なシェアを持つ中、これといった差別化ができず苦労したのを覚えています。 そしてメインユーザーの女性のニーズに立ち返り、素肌を研究し、'97年に発売したのが「ケアリーヴ」でした。 会社としては、かなり力が入っていたのだと思います。商品の特長や開発背景を詳細に記した14ページのコンセプトブックが制作され、営業に配られたんです。我々も、これは会社は本気だぞ、と思いました。 当時はツルツルした塩化ビニル製の救急絆創膏が主流の中、新素材の高密度ウレタン不織布を採用。 得意な粘着剤の技術も活かして、水に強くはがれにくい、透湿性に優れ皮膚の蒸れが少ない、はがすときに痛くない、関節の曲げ伸ばしにもフィットするなど、多くのユーザーの不満を解消する高機能な製品を作り上げました。 例えばガーゼ部分も、キズ口にやさしく、くっつきにくいガーゼなんですが、それだけではない。パッドの上下のテープの幅が、従来品より広くなっているんです。そうすることで、側面からはがれにくくなった。実際につけてみると、よくわかるんです。 「ケアリーヴ」の名前は、キズをやさしく守る木の葉のイメージから生まれています。清潔感あふれる、爽やかなグリーンをテーマカラーにしました。 一方、営業が心配したのは、高機能だけに価格が少し高くなったことでした。でも、会社からは「絶対に安売りはするな」と厳命されました。それだけ商品に自信があったのだと思います。いいものだから、必ず認められて買ってもらえるようになる、と。しかし、大きな販促費があるわけではない。そこで私たちが取り組んだのが、ドラッグストアの店頭でサンプルを配ることだったんです。 テレホンカードサイズの台紙にサンプルを入れ、財布の中に入れやすいようにしました。救急絆創膏は、いざというときに使うものですから、持ち歩いてもらうのがいい、と。実は店員さんにもサンプルをお渡ししていたんですが、火がついたのはここからでした。あちこちの店員さんが「ケアリーヴがいい」と言ってくださり、業界内に広まっていったんです。