なぜ積水ハウスは「地面師たち」にだまされたのか? 不動産詐欺にだまされないための対策も
個人が地面師にだまされるケースも…その対策は?
地面師たちの標的はもちろん積水ハウスのような大企業だけではない。個人の土地売買においても地面師たちの被害は多く起こっている。 特に地面師にとって、相続などで住んでない空き家が増えるのは好都合だ。管理の届かない遠方の土地を知らないうちに売られるといったケースは増えるかもしれない。善意の第三者という言葉を知っているだろうか。たとえ詐欺によって売却された土地であっても、所有権移転登記がされたうえで事情を知らない第三者に売却されてしまえば、第三者がその土地の所有権を主張できるという考え方だ。 つまりだまされたことが分かっても不動産は戻ってこないことになる。 以前に名古屋市天白区で不法に土地を売却されるという事件があった。高齢の地主が所有していた土地を勝手に売却して、買ったデベロッパーは61戸のマンション1棟と約20棟分の戸建てを建て、分譲した。 独り暮らしだった地主の家に出入りしていた地面師は、権利書や実印を持ち出して地元のデベロッパーに売ってしまった。高齢の地主の相続人たちがそれに気付いた時にはすでに分譲がはじまっていた。数年かけて裁判が行われたが、その土地には全く事情を知らない住民が住んでいるため取り戻すことなどできない。売却代金もほぼなくなっていたという。 では、地面師にだまされないための対策はどうすればいいのだろうか。まず特に気を付けたい物件は以下のようなケースだ。 注意すべき物件高齢者が所有する不動産 高齢者が所有する不動産はターゲットになりやすい。認知能力の低下や最新の詐欺手口への認識が低いなど、総合的に詐欺行為が行いやすいからだ。特に高齢夫婦のみや独り暮らし、特別養護老人ホームなどの施設に入っている物件は要注意だ。 長期間空き家や更地の物件 相続した実家などで住む必要がなく、そのまま空き家になっていたり解体したまま放置されている物件も狙われやすい。管理されていないため、異変に気付きにくいからだ。なかには勝手に家を解体されて売られていたというケースもあるという。特に遠方で目が届かない物件は要注意だ。 抵当権の設定がない 不動産に抵当権などの担保が設定してあると、抹消して売買しなくてはならないため詐欺には狙われにくくなる。抵当権設定がない不動産のほうが狙われやすくなるといえる。 具体的な対策3つ『不正登記防止申出』制度の活用 『不正登記防止申出』は、権利証や印鑑証明書等が紛失や盗難されてしまったなどの事情で不正な登記がされる恐れがある場合、それを防止するために設けられた制度だ。 法務局へ不正登記防止申出書を提出し、本人確認が行われる。申し出対象の不動産に登記申請などの動きがあった場合に本人へ通知される。積水ハウスの事件でも本物の所有者からこの申し出がされていたと推測できる。ただし有効期限は申し出から3カ月しかなく(再度の申し出は何度でも可能)、申し出が必要となった理由に対応する措置(紛失届や盗難届など)を取っていないと受理されない。単に空き家だからという理由だけでは受理されないことが多い。 空き家の対策 空き家の対策として現実的なのは、売却してしまうことだ。売ってお金にしてしまうのが一番なのだが、それができない場合は賃貸に出したり、アパートに建て替える、駐車場にするなど、土地を活用する方向で考えたい。 どうしても一定期間放置する場合は、こまめに現地へ行って管理し、できれば近隣の人にも見ていてもらうなど協力を仰ぎたい。法務局の登記情報は出向かなくても確認できるので定期的にチェックするのもいいだろう。 売却時の対策 不動産を売却する時は、まず仲介業者に気を付けることだ。名古屋のケースでは地面師が免許を持つ仲介業者を装った事件だった。大手の仲介業者か地元で長く営業している仲介業者がよい。 また、司法書士は買い主側ではなく自分で指定したほうがベストだ。そして当然のことながら権利証や実印などの管理は厳重にして、保管場所は他言しないこと。契約などの際はあらかじめ出しておくことだ。内容確認などで必要だからといって権利証や実印を預けたりしてはならない。