思春期の子どもに増加する「うつ病未満の抑うつ」 注意すべきレッドサインの症状
親御さんにも本人にも理由がわからないことが多い
抑うつや不安で受診する子たちは、あまり自分からしゃべろうとしません。質問にうなずくだけで、ほとんど口を開かない子もいます。 ・診察時にしゃべらない子もいる 診察室で子どもがしゃべろうとしない理由はいろいろ考えられます。たとえば、自分ではとくに困りごとを感じておらず「なぜここに来なくてはいけないのか」納得していない場合です。親に無理やり連れてこられたという子もいます。親とのあいだに大きな葛藤を抱えていて素直になれず、反抗して口をきかない子もいます。 しゃべらない理由が反抗なら、なにかのきっかけで話し出すこともありますが、場面緘黙(かんもく)があると一切口をきいてくれないため、問診は困難です。小学生から緘黙があらわれた場合、ほとんどの子はそのままずっと学校では話ができません。学年が上がるにつれてますます状況が難しくなると、抑うつ症状があらわれる子もいます。 また自閉スペクトラム症など、神経発達症(発達障害)の特性があると自分のことを客観的に捉えることが難しく、生活に支障がないか、不安やつらさがないかを尋ねても「大丈夫」しか答えない場合もあります。 ・ストレスという言葉では認識していない子もいる 年齢や発達の状況によっては理解力や言語化力に乏しい子もいます。たとえば、不快なことがあったとき、自分の感情がどのように変化したのか、それが身体にどんな影響を与えたかなど、自分自身で捉えることができません。このため、自分の感覚や感情を、他人にうまく伝えることもできないのです。 「イライラした?」「いやなことがあったかな」と尋ねるとうなずきますが、それが自分にとって精神的な負担になった「ストレスの原因」とは認識できません。ストレスという言葉を使わず、まずは「心と身体はつながっているもの」ということから説明します。 身体的な苦痛で精神的症状が出ることもあり、精神的な苦痛で身体的症状が出ることもあるということを説明し、あらわれている症状のおもな原因が身体と心どちらにあるのかを探っていきます。
舩渡川智之