【バレー】3年生7名だけで全国大会に挑んだ大衡中男子。セッター負傷、そのときチームは…/追憶の福井全中〔後編〕
予選グループ戦敗退。「どんまい!!」の言葉は実に温かく
その後は髙橋キャプテンがトスを上げ、リベロの鈴木も前衛を含めてフル稼働。だが藤枝リアンに0-2(11-25,22-25)、大東中(大分)との敗者復活戦でも0-2(11-25,14-25)と敗れ、予選グループ戦敗退という結果で福井全中を終えることになった。 「力を出せない、出しきれない状態で負けましたから」という髙橋キャプテンの言葉どおり、本来の力を発揮できなかった悔しさは残って当然だろう。けれども、その現実を前にしながら大衡中の面々は実にすがすがしかった。「ケガはしようがないですから」と髙橋キャプテンは言い、負傷した和野自身も「ケガをしてしまったことに対する悔しさはありますが、そこはスポーツなのでしかたがないとも思います」と口にする。 「ケガした直度は何も考えられませんでした。ベンチで手当てを受けてからは『戻りたい』『やれるならば最後までプレーしたい』という気持ちでしたし、敗者復活戦では『元気を分けたい!!』と思いながら、みんながプレーする姿を見ていました」と和野。中学からバレーボールを始め、「仲間が打ちやすいように」と懸命にトスを上げた司令塔に、チームメートは大会を終えて「どんまい」と声をかけていた。響きだけで言えば淡白に感じるが、落胆しても当然というべき状況の中で、彼らが発するその四文字は実に温かかった。
「バレーボールを存分に楽しみながら、勝つ喜びを得てほしい」と千葉監督
大会を終えて、千葉監督は部員たちへ健闘をたたえる言葉をかけた。「後悔だけはしてほしくなかった」という思いからだった。 「ほんとうによくやったと思います。ベストなかたちではなかったかもしれませんが、自分たちの持っているものを全国大会では披露できたと思うので。そこは満足して、納得して、終えてもらいたかったですし、そう伝えました。 私が素人ということもありますが、勝つためにガツガツやるのではなく、バレーボールを存分に楽しみながら勝つ喜びを得てほしい、といつも話しているんです。その点、彼らはほんとうに練習でも試合でも、勝っても負けても楽しくやっている子たちでしたね。それがよさであり、こうした全国大会出場という結果につながったのではないでしょうか」 部員たちに月並みな質問を投げかける。このチームのよさはどこにあると思う? すると、誰もが「仲のよさ」と答えた。その中の一人、和野が松葉杖をつきながら言う。 「一人がいなくなっても、その穴を埋められる。それが、このチームの強さなんだな、と感じました」 部員7名で臨んだ、最初で最後の全国大会。彼らだけに、彼らだからこそ備わった強さが、そこには確かにあった。 ≪完≫ (文・写真/坂口功将)
月刊バレーボール