世界前哨戦の決まった村田を変身させたファンの勘違い
さて村田が「倒す!」と意気込む、今回の世界ランカーは15戦13勝(6KO)1敗1分のWBCラテン・ミドル級王者。長身のスラっとした褐色の肌をしたボクサーファイターで非常に好戦的だ。ガードを固めてかけてくるプレッシャーは、どことなく村田のスタイルに似てなくもない。 手数が多く横ぶりのスイング系のパンチにはスピードがある。唯一の1敗は、現在WBCの3位にランクされているホルへ・セバスチャン・ヘイランド(アルゼンチン)と敵地でWBCラテン・ミドル級のタイトルをかけて戦った試合での反則負け。プロでの反則負けは珍しいが、6ラウンドの途中に使用未申請の薬物を使用したとの疑いで、現地コミッションが親指くらいの白いカプセルを示しながら試合を止めて反則負けを宣告した。そこまではサウスポーのヘイランドに痛打されるラウンドもあったが手数ではリードしていた。 「パンチを振ってくるし危ない選手だとも思う。僕のときは、禁止薬物は使わないでいただきたい(笑)」とは、ユーチューブで、この試合の映像を見た村田の印象。 ただ足は使えず、突っ立ってボクシングをするので、正面から被弾する場面が見られて村田のパンチは当たるだろう。しかも、よく手を出してくるが、恐れるほどの一撃必殺のパンチ力はない。この業界では、こういう相手を「噛み合う相手」と呼ぶが、おそらく打ち合いの場面が、随所に見られる激しい試合展開となり、村田がワンチャンスで待望の3試合ぶりのノックアウトを手にすると推測する。 「世界ランカーについて特に意識はないが、自分を高める、いいチャンスだと思う。この試合が終わったときに、その次が見えてくる」 村田陣営では、年内世界初挑戦という路線を敷いている。もう1試合はさむかどうかはわからないが、いずれにしろ、テレビ局側が予算を組みやすい年末興行に世界戦をもってくるだろう。 いろんな人から聞かれる「村田は本当に世界王者になれるかどうか?」という議論の答えは、確かにこの世界前哨戦で見えてくる。 「すべては結果論」は、村田の口癖。覚醒を宣言した村田の初の対世界ランカー戦の“結果”が楽しみである。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)