50代ひとりっ子「母の死→相続手続き開始」で判明した驚愕事実…〈20年前の父の死〉から放置された大問題「死んだ人にはもう聞けない」
古い書類で手続きは可能か?
父親の相続時の遺産分割協議書を見つけることができたといって、鈴木さんは打ち合わせに持参してくれていました。 「この遺産分割協議書、果たして使えるのでしょうか? 相続人の母親は亡くなってしまいましたが…。もし使えないなら、一体今回の相続をどうすればいいのでしょう?」 筆者と提携先の司法書士が確認したところ、遺産分割協議書のほか、父親の戸籍関係の書類、相続人の母親と鈴木さんの戸籍や印鑑証明書など関係書類が一式残っていました。おそらく、法務局に申請するつもりだったのでしょう。 しかし、これらをもとに相続登記するには問題があります。自宅の持ち分10分の4を相続する母親の本人確認が、もはや不可能だからです。近年では、相続登記するにも、本人の身分証明書や司法書士による意思確認(面前、電話等)が不可欠となっています。
数次相続とは?
今回の鈴木さんのケースのように、父親が亡くなり、その相続手続きが終わらないうちに二次相続が発生することを「数次相続」といいます。10年以内に相続が発生したときの場合を指し、相続税から控除できる特例もあります。 しかし鈴木さんの両親の場合、父親が亡くなってから20年経ったところで、母親が亡くなっています。本来なら手続きができる年数がありますので、一般的な数次相続とは異なるケースではありますが、一次相続の手続きができていないうちに二次相続が発生したという点は同じです。
「手続きしなかった」ことが幸いした点
仮に、遺産分割協議のとおりに相続手続きをしていたなら、登録免許税と司法書士の手数料がかかっていました。しかし、登記をしていなかったため、いまとなっては母親分の相続登記をするすべがありません。したがって、母親の登記は飛ばし、鈴木さんが一度に父親の相続をすることになります。 すると、母親のときの司法書士の手数料や手間が省けたことになり、結果的には多少なりとも費用負担が減らせたといえます。
今回必要になる「遺産分割決定書」とは?
では、これからの手続きをどうすればいいのでしょうか? 相続人は鈴木さんだけですが、一次相続の手続きができていない場合、〈遺産分割が決定した〉という書類を作成する必要があります。「遺産分割協議書」は相続人2名以上の場合に作成しますが、その代わりとして「遺産分割決定書」を作成します。これによって、数次相続の場合、第1相続から第2相続において、相続人1人で遺産分割を決定することになります。 提携先の司法書士から説明を受けた鈴木さんはすぐ、相続登記をすることを決めました。相続手続きは1回とはいえ、父親の戸籍一式と母親の戸籍一式について、生まれたときから亡くなるまでを揃える必要があります。そうした関係書類を揃え、遺産分割決定書を用意し、不動産の名義を父親から鈴木さんに変更します。
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