森友学園問題で注目「会計検査院」とは? 坂東太郎のよく分かる時事用語
学校法人「森友学園」の国有地売却問題が再びニュースになっています。「会計検査院」という国家機関が国会に提出した報告書で、いわゆる国有地の「値引き8億円」を「十分な根拠が確認できないものとなっている」と算出方法などを疑問視したからです。「問題ない」「適切だ」と主張してきた財務省や国土交通省も相手が相手なだけに「指摘は重い」と認めざるを得ない状況です。 【写真】「森友学園」問題で残された4つの謎 それほどのインパクトを持つ「会計検査院」。普段あまり脚光を浴びず、知らない方も多いようです。そこでいかなる権限を有する組織かを考えてみようと思います。
会計検査院の歴史と位置づけ
現在の会計検査院の立場は、憲法90条に「国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない」と明記されています。行政機関でありながら、その地位は「内閣に対し独立の地位を有する」(会計検査院法1条)ため、内閣(行政トップ)に指図されません。他方、行政機関ではあるので、他の2権(立法機関=国会、司法機関=裁判所)にも属しません。詳細は後述するとして主な仕事は大ざっぱに表現すれば「国の無駄遣いの調査」となります。 国の会計は、ともすると「予算」(これからの使い道)ばかりが話題となり、「決算」(どう使ったか)が地味になりがちです。でも民間企業は逆で、決算こそ企業の姿形を現すのは周知の事実。その役割は通常の行政機関にも国会にもあるのですが、別途独立して任に当たる機関ともいえましょう。民間で無理やり置き換えると公認会計士による監査と似ています。 1867(慶応3)年の王政復古の大号令で設置された「三職」による新体制、翌年の「政体書」公布に引き続く69年の版籍奉還に伴う官制改革で、日本独自の「太政官制度」という統治システムが誕生します。この過程で設けられた会計官→大蔵省(現在の財務省)の一部局として検査院の前身が置かれました。1880(明治13)年に、今へ続く「会計検査院」の名で衣替えします。太政官制は85年成立の内閣制度で廃止、89年の大日本帝国憲法で「国家ノ歳出歳入ノ決算ハ会計検査院之ヲ検査確定シ政府ハ其ノ検査報告ト倶ニ之ヲ帝国議会ニ提出スヘシ」(72条)と現憲法と似た役割を与えられます。2項で「会計検査院ノ組織及職権ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム」とあり、該当する法律(旧会計検査院法)1条に「会計検査院ハ天皇ニ直隷シ国務大臣ニ対シテ特立ヲ有ス」と独立した監督権限が認められます。