森友学園問題で注目「会計検査院」とは? 坂東太郎のよく分かる時事用語
どんな組織? どんな仕事?
職員の数は約1250人。他の府省庁と同じく国家公務員試験を突破して入職するのが基本です。大半が検査を実施する事務総局に属しています。意思決定は3人の検査官で構成する「検査官会議」。そのうち1人が院長です。 必ず検査しなければならないと決まっているのが「国の毎月の収入支出」。国有財産や国債も該当します。前述のように「国」とは、1府11省などの行政機関と国会、裁判所にまで及ぶ広範な対象です。他に「国が資本金の2分の1以上を出資している法人の会計」も担います。日本銀行、日本郵政、日本年金機構、国立大学などです。 もう1つは検査院が必要と認めた場合です。国の補助などがある47都道府県など自治体も対象となり得ます。 「必ず検査」団体すべてと検査院が目を付けた団体の何を調べるかについて、毎年秋ごろに計画を立てて調査スタート。府省庁などから書類の提出を求め、必要とあれば実地検査を行うべく出張もします。翌年11月に、1年間の調査の成果として「決算検査報告」をまとめ上げ、憲法の規定にしたがって首相に手渡すのです。 政治の作用は突き詰めれば「どこかから税を取ってどこかへ使う」です。例えば行政機関に割り当てられた予算は主権者である国民からの預かり金なので無駄遣いはもってのほか。入札などが正しい手続きでなされ、妥当な金額が支払われているのか。もっと節約できたのではないかといった観点で調べ上げて国民主権を擁護するのです。
なぜ森友問題が検査対象に?
1986(昭和61)年、フィリピンの独裁者マルコス大統領が失脚した後に明らかとなった文書から日本の政府開発援助(ODA)がまともに使われていなかったのではないかという「マルコス疑惑」が噴出し、会計検査院は翌年、事務総局第1局に外務検査課を設けて体制を整えました。 高齢化により国の支出で最も多くなった社会保障費のうち多くを占める年金、医療、介護の使い道にも目を光らせています。特に医療費は制度が複雑でブラックボックス化しやすいため重要な役割といえましょう。 1989(平成元)年から導入された消費税は、事務が繁雑になる事業者への配慮によって認められた制度が「益税」を生むという問題を今日まで抱えています。事業者が消費者へ売って預かった税が国へ納められていないという現象です。「入るべき金が入らない」のも無駄遣いの一種なので検査院が不足状況を把握しています。 NHK(日本放送協会)は放送法で「協会の会計については、会計検査院が検査する」(79条)と定められていて「必ず検査」の対象です。 検査は国会からの要請で行われる場合もあります。今回の森友学園をめぐる問題がまさにそれに当たり、参議院予算委員会が今年3月に国会法105条の規定を用いて会計検査院に調査を求めていました。同院は11月22日、参議院に結果を報告し、それが今話題になっているのです。