ANAHD芝田社長、777Xは客室仕様変えず ボーイング遅延で26年受領へ
全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)の芝田浩二社長は10月31日、国際線の次世代フラッグシップであるボーイング777-9(777X)型機について、客室仕様は発注当初のまま受領する考えを示した。発注時は2021年度から受領予定だったが、ボーイングの品質問題や不具合で納入開始が5年程度遅れる見通しで、競合他社と比べて「手を付けられるところは怠らないようにしたい」と述べた。 【写真】777X試験機のコックピットや機内 ◆21年度受領が26年に 777Xは、ボーイングが開発を進めている次世代大型機で、ANAも長距離国際線を中心に投入している777-300ERの後継機。メーカー標準座席数が2クラス395席の777-8と426席の777-9の旅客型2機種、最大積載量(ペイロード)118トンの貨物型777-8Fの計3機種で構成され、開発は777-9から進められている。 ANAHDは10年前の2014年に777-9を20機発注し、2021年度から2027年度に受領する計画だった。このうち2機は、2022年に777-8F貨物機へ発注変更。受領開始は777-9がボーイングの納入遅延で2026年、777-8Fは2028年以降を予定している。777-9は、当初の計画通りであれば機体がほぼ揃う時期から受領が始まることになる。 芝田社長は、ボーイングの品質問題や16年ぶりとなるストライキの影響により、「2025年度のデリバリー機材は、777-9が2機、737-8(737 MAX 8)が2機、787が787-10と787-9合わせて7機。2025年度中のできるだけ早い時期にという思いで待っている」と説明。このうち、777-9の初納入は2026年に遅れることをボーイングのケリー・オルトバーグ社長兼CEO(最高経営責任者)が10月11日に明らかにしており、ANAHDの発注分も最短で2026年前半になる見通し。 ◆「根こそぎ変える計画ない」 ANAの777Xは、当初2021年度に就航する計画だったことから、シートは現在777-300ERに搭載している個室ファーストクラス「THE Suite」や初の個室ビジネスクラス「THE Room」相当になるとみられる。これらのシートは2019年7月に登場しており、777-9が2026年に就航した場合、7年が経過し、多くの航空会社がモデルチェンジの目安としている8年から10年といった時期に差し掛かってくる。 一方、航空機のシートは耐空証明の取得など、設計を見直すとあらゆる認証を再取得する作業が生じるほか、シートメーカーではコロナの影響による人手不足の影響が残っている。このため、機体の受領が遅れても、航空会社がシートの仕様を大幅に見直すことは容易ではないが、競争環境が激化した場合、何らかの対応を迫られることになる。 芝田社長は「機内の仕様も固まっているので、現時点でプロダクトを根こそぎ変える計画はない。しかし、他社の動向などをしっかり見ながら、手を付けられるところは怠らないような備えはしていきたい」との意向を示した。
Tadayuki YOSHIKAWA