地検トップによる性被害訴える女性検事「被告の罪深さ、本当に許せない」身をもって性犯罪被害者のつらさ知り「検事の鎧」で戦う
■身をもって知った苦しみ 被害者心理を伝える講習を警察官らへ行う
検事である自分が身をもって知ってしまった被害者の苦しみ。事件後は、気丈にも被害経験は伏せたまま、捜査現場の警察官や検察官に、被害者心理を伝える講習も行った。 被害を訴える女性検事:こういったこと(被害者心理など)を理解してもらわないと、声を上げた被害者を救っていくことができないので、皆さん(捜査機関)に客観的な資料を用いてお伝えして、『多くの被害者を救ってあげて欲しい』ということをお願いしてきました。 浜田敬子さん:ご自身が当事者だったつらさもありながら、これを生かすというのは非常に困難だと思うのです。 被害を訴える女性検事:私自身は決して強い人間では全くなくて、普通の人間で、だけど誰かを守りたいって思ったら、検事っていう鎧(よろい)を着て、守りたい誰かのために全力で最後まで戦うことができます。 被害を訴える女性検事:私は検事のよろいを着ればどこまでも強くあります。そのよろいを着て『泣き寝入りしている人たちが山のようにいるから、被害を訴えてきた人は大事にしてあげて欲しい。一緒に戦って欲しい』ということを訴えてきました。 その圧倒的な熱意は、確かに捜査現場の人々に響いていた。講習を受けた人の中には、女性検事が被害者だと知り、支援する会を立ち上げた人もいる。 講義を受けた元警察官:最新の捜査手法だけではなく、心構え的なものとかもありましたし、中身の濃い講義でしたので胸に響くものがありました。今になって思ったら、ご自身がそういう経験をされていたので、だからこそのリアルで魂のこもった講義だったんだなと。被害者の無念をはらすだけではなくて、その心までも救おうとしていた。そんな姿勢を見てきたので、こんな人を辞めさせてはいけないと強く思います。
■「率直な気持ちとしては怖くて戻れない」「被害者の回復に力を添えることができるのは検事の仕事だけ」
被害の苦しみと闘い続けてきた女性検事だったが、北川被告の退官後も検察庁に影響力が残る現実に心身をむしばまれ、PTSDを発症。休職を余儀なくされた。 自らを守るために被害申告をしたが、検察庁内での誹謗中傷などもあり、復職できていない。 浜田敬子さん:現場に復帰して検事の仕事を続けるためには、今どういうことが一番望んでいらっしゃるのか。 被害を訴える女性検事:今、検察庁の中にしかハラスメントを訴えるものがないんです。検察庁内で起きたことをいくら検察庁内で言っても、上の人たちの意識が変わらない限りは適切に対応してもらえないし、だから外部にそういう相談窓口が必要だと思う。 浜田敬子さん:最後に私からお聞きしたいのですが、それでもやっぱり検事の仕事に戻りたいっていうふうに思ってらっしゃるのはなぜなのでしょう。 被害を訴える女性検事:率直な気持ちとしては、怖くて戻れないです。戻りたかったけど、今のままでは本当に戻れないし、あの建物(検察庁)に行くことすら怖いです。 被害を訴える女性検事:だけど、皆さんが検事の仕事に戻れるようにするために応援してくださっているという気持ちもすごいありがたいし、適切に加害者を処罰して、被害者の回復に力を添えることができるのは検事の仕事だけなので、だから検事の仕事にやっぱり未練があるんです。 女性検事は、二度と同じような被害が起きないようにと「職員を守って欲しい」といった思いを記した上申書を検察庁に送っている。 今後、裁判で北川被告は何を語るのか。 次回の裁判の日程は、まだ決まっていない。