《都市を支える下水道》急増ゲリラ豪雨からまちを守る 都の“浸水対策”
昨年9月に東北・関東地方を襲った豪雨は、地域の川の水位を押し上げて、各地で水害が発生しました。なかでも、ちょうど1年前の9月9日には鬼怒川が決壊し、常総市は市域の3分の1が浸水被害に遭いました。激甚な被害を出した水害は、その恐ろしさを再認識させられました。また都市として多くの教訓を残し、水害発生時の避難方法などを再確認する機会になりました。 今般、わずかな時間で大量の雨が降る“ゲリラ豪雨”の発生回数が増えています。ゲリラ豪雨は都市を水没させかねません。首都・東京は機能不全に陥り、その影響は日本全国にも波及するでしょう。ゲリラ豪雨の原因は都市のヒートアイランド化によるところが大きいと言われますが、だからと言って、人間が気象を意のままにコントロールすることはできません。 制御不能の異常気象に対して、水没によって都市機能を喪失させないためのインフラ改造が東京都の地中で進んでいます。
1時間50ミリの豪雨に対応 下水道施設で進む『内水氾濫』対策
昨年、茨城県常総市などで大きな被害を出した水害は、一帯を流れる鬼怒川が氾濫したことが引き金になっています。そうしたことから、水害と聞くと大量の雨が降ったことで河川の水位が堤防よりも上昇してしまうことをイメージしがちです。しかし、近年の東京における浸水被害の多くは、河川による氾濫が原因ではありません。河川や海に流れる前の雨が、下水道内で氾濫を起こしてしまうケースが大半です。 こうした下水道区間で起きる氾濫を『内水氾濫』と呼びます。2013(平成25)年度の統計によると、都内で発生した浸水被害は約700棟。そのほとんどが、内水氾濫によるものでした。そうした内水氾濫が増えている背景について、都下水道局計画調整課の担当者はこう話します。 「ゲリラ豪雨は短時間で局地的に雨が降るので、降雨面積が少ないという特徴があります。そのため、ゲリラ豪雨が発生すると、河川に流入する前に下水道に雨水が集中してしまい、そこで内水氾濫が起きてしまうのです」。 都は過去の事例を参考にして豪雨対策基本方針を策定。通常、都の下水道施設は1時間に50ミリまでの降雨に対応できるようにしています。 「昭和50年代は、1時間に50ミリを超える豪雨が観測されなかった年もありました。しかし、それを超える豪雨が発生する回数は年を追うごとに増えています。50ミリを超える降雨に対して、下水道局では暫定的に雨水を貯留できる貯留管や雨水調整池をつくって対応しています。さらに、大規模地下街で内水氾濫が起きてしまうと被害が大きくなるため、地下街は1時間に75ミリまで対応できるような下水道施設を整備しています」。