レントゲンで「異常なし」の膝・関節の痛み… 原因や治療法、費用目安を医師が解説
滑膜が痛みの原因になる仕組み
編集部: 滑膜が痛みの原因になるとはどういうことですか? 奥野先生: 滑膜が炎症を起こすと、滑膜がどんどん腫れ上がって分厚くなります。この滑膜にはたくさんの神経が分布しており、滑膜が分厚くなることで神経も増殖します。 この滑膜に炎症が起きると炎症性サイトカインなど、痛みを引き起こす物質がたくさん作られ、神経を繰り返し刺激します。これにより痛みが生じるのです。 編集部: なるほど、そういう仕組みなのですね。 奥野先生: 炎症性サイトカインは関節の変形も引き起こします。それにより、痛みはますます増幅します。 編集部: 炎症が原因で痛みになるのですね。 奥野先生: また、滑膜には血管が豊富に分布していて、炎症が起きると異常な血管がたくさんつくられます。実は、人間の身体は「血管と神経が一緒になって伸びる」という基本ルールがあります。 つまり、血管が増えれば神経も一緒になって増えるということ。そのため、余計に増えた神経から痛みの信号が脳に送られ、痛みを自覚するようになるのです。 編集部: 神経が増えることで、痛みが生じるのですね。 奥野先生: はい、正常な神経と異なり、異常に増殖した神経はいびつな形をしていて、たとえば階段の昇り降りなど、普段ならどうということのない動作でも、痛みを生じさせてしまいます。 編集部: 滑膜炎のほかにも、レントゲンに写らない痛みの原因はありますか? 奥野先生: そのほかにも脂肪体というものがあります。脂肪体もレントゲンでは写らないため、意外と見逃されていることが多いというのが実情です。 編集部: 脂肪体とはなんですか? 奥野先生: 膝のお皿のすぐ下にあり、脂肪でできた部分です。クッションのような役割をしていて、Fat padとも呼ばれています。脂肪体は太っている、痩せているということに関係なく、誰もが持っています。 編集部: 脂肪体がなぜ、痛みの原因になるのですか? 奥野先生: 最近になり、脂肪体のなかにはたくさんの神経線維が走っていること、そして、その周囲にはたくさんの血管があることがわかってきました。そのため、この脂肪体に炎症が生じると、神経線維が多いだけに、非常に強い痛みになります。