「100歳以上生きる人」の共通点とは? 500人以上の百寿者と面談した専門家が明かす 「老害という言葉を危惧している」
「3000円のお小遣いで本を買うのが楽しみ」という100歳の女性
では、実際に私がお会いしてきた百寿者たちはどうだったでしょうか。 兵庫県の101歳の女性は、82歳から認知症の兆候があったそうです。しかし、85歳まではお孫さんのご飯を作り続け、92歳まで草刈りを行い、骨折して入院する101歳まで、昼間は一人で暮らしていました。 また、105歳のある男性は、食事の時間以外はほとんどベッドで過ごしていたので、私が「退屈ではないですか」と聞くと、「昔よくやっていた史跡訪問のことを思い出したりするので退屈はしません」と答えていました。 まさに、ピンピンではなくても幸せな百寿者たちの姿です。 さらに、100歳のある女性は、ご主人が会社の役員をしていたらしく、かつては金銭的に満たされ、ぜいたくな生活をしていたそうです。その後、家族が体調を崩して彼女は施設に入ることになるのですが、毎月3000円のお小遣いをやりくりし、1カ月に1~2冊、あまり高くない1000円台の本を買うことがこの上ない楽しみになったと話していました。 この女性の生き方には、85歳、もしくは90歳以上と定義されることが多い超高齢期を幸せに過ごすためのヒントの一つが隠されています。それはSOCモデルです。「選択(Selection)」「最適化(Optimization)」「補償(Compensation)」の頭文字から取った名称で、簡単に言うと、加齢に伴い、体力や資力などさまざまな資源が減っていく中で、目標を少し下げ(選択)、自分の使える力を適切に振り分けて(最適化)、さらにはそれまで使っていなかった補助を使う(補償)。これによって充足感を得るという考え方です。この女性は、上手に「選択」と「最適化」ができ、長寿を楽しめているケースだと思います。
「やるべきことがある」という精神的な長寿効果
そして、私がお会いしてきた百寿者たちには「何かやることがある人」が多い印象があります。取り立てて「意味」や「目的」を伴っておらず、ややもするとささいかもしれないけれど、自分なりの「やるべきこと」「やりたいこと」がある人は長生きしやすいようです。例えば、孫が使っているおもちゃのピアノの鍵盤を、毎日、とにかくピコピコとたたくのが楽しいと言っているご高齢の人がいました。水まきでも、家事でも、マイルールとして何かやることがある人が、長生きしている人の中には多いように感じます。 布団の中で体をくねくねと動かす、「むちゃくちゃ体操」と名付けた運動を続けていたある90代の女性のように、独自の健康法を持っている超高齢者にも多くお会いしてきました。そうした健康法には、肉体的な健康の維持と同時に、「やるべきことがある」という精神的な長寿効果があるのかもしれません。