児童相談所職員は3年目でベテラン扱い?増え続ける児童虐待、AIは対応に追われる現場を救うか
児童相談所のある職員は取材に対し「子どもの命を守る最前線の仕事で、やりがいは大きい」と話した。一方、虐待への対応の判断を誤れば社会から厳しい非難に遭う。対応に納得できない親から怒鳴られることもある。常にプレッシャーやストレスを感じているという。 職員数は増えているが、経験の浅い職員が多く含まれている。さらに職員は数年ごとに異動を繰り返すため、職員の経験をどう引き継いでいくのかも課題だという。 ▽AIと人が担う業務の区別が重要 政府は2024年度、AIを活用した全国統一システムの運用開始を目指している。参考指標として「一時保護スコア」や「再発スコア」の表示を想定している。判断の質向上が目的だ。 AI活用システムはどのくらい有効なのか、児童相談所で勤務経験がある立正大の鈴木浩之准教授に話を聞いた。 鈴木准教授はAIが担える業務と、そうでない業務を区別することが重要だと訴える。職員は会議の議事録や関係先への提出書類の作成に多くの時間を費やしているという。これらをAIで代替して、余った時間を保護者や児童との面会に使うことができれば導入効果は大きいとみる。
「AIにカウンセリングはできない。基本的な手続きのミスを防ぐなどサポート役としては有効だ」と強調する。 一時保護など重要な判断に活用する場合はどうか。鈴木准教授はAIが数字や記号で定量的な評価をすること自体に問題ないとの立場だ。 ただ「最後は人間が判断するというのが大前提。数字は絶対ではなく、常に疑いを持つべきだ」と指摘する。AIは学習に使うデータ数が多いほど性能が向上する性質がある。鈴木准教授は「全国にある児童相談所のデータ活用について、政府がルール作りを主導すべきだ」と話している。