西日本新聞　社説

　「過去最多」であっても、もろ手を挙げて喜べる数字ではない。全ての政党にもう一段の努力を求める。 　衆院選の女性候補は314人で、これまで最も多かった2009年の229人を大幅に上回った。初めて全候補者の2割を超えた。 　それでもまだ4人に1人に満たない。投開票を経ても、国会の風景は大きく変わらないだろう。 　九州・沖縄8県の34小選挙区では女性ゼロが13選挙区ある。佐賀県は唯一、女性候補が一人もいなかった。 　政府は第5次男女共同参画基本計画で、衆院選の女性候補の割合を25年までに35％にする目標を立てた。国会が政党を中心に運営されている以上、政党には女性議員を増やす責任がある。 　今回、女性候補が35％を超えたのは参政党と共産党の2党しかなく、公明党、自民党、日本維新の会は10％台にとどまった。 　候補者数が最も多い自民は過去最多となる55人の女性を擁立した。全体の数を押し上げたことは評価できる。 　その多くは比例代表の候補だ。自民は裏金事件に関与した一部現職に対し、小選挙区と比例代表の重複立候補を認めなかったため、比例候補を補充する必要があった。 　ブロック別の比例名簿順位を見ると、重複立候補者より下位に女性が目立つ。 　自民の小選挙区候補は男性の現職が圧倒的に多く、女性の新人と一気に入れ替わりにくい事情がある。引退する議員が息子に地盤を譲る選挙区も複数あり、世襲の弊害も指摘できる。 　日本の女性議員の割合は国際的にも低い。列国議会同盟の23年データによると、衆院議員の女性比率は186カ国中164位だ。 　2年前の参院選で女性候補が初めて3割を超えたとはいえ、男女均等への道のりは遠く、歩みはかなり遅いと言わざるを得ない。 　国会議員の構成は社会の縮図でありたい。中高年男性が多数を占める現状よりも、性別、年齢、経歴に偏りがない方が多様な民意を国会に反映しやすい。 　政治分野における男女共同参画推進法は男女の候補者均等に向け、政党に人材育成などの努力を求めている。 　女性議員を育てるために政党が企画する政治塾、セミナーは増えている。地方議員や地域の有為な人材が立候補しやすい環境づくりに、もっと力を入れてほしい。 　政党の努力に委ねても大した変化が期待できないなら、議員定数の一定割合を女性枠とするクオータ制の導入をはじめ、選挙制度の見直しを検討すべきだ。 　政治活動と家庭生活の両立や性的嫌がらせの悩みは、男性よりも女性に多い。立候補を志す女性の障害を取り除く社会機運も高めたい。