AI革新けん引する…次世代国産プロセッサー、富士通「モナカ」の全容
超低電圧動作技術で空冷 高安全性を実現
富士通は半導体技術の課題である「微細化に伴う熱との戦い」でもブレークスルーに挑んでいる。その一つは空冷の採用だ。吉田エグゼクティブディレクターは「ハイパースケーラー向けのCPUを作るなら、消費電力が大きくてもDCやサーバーラック(収納棚)に備わった水冷システムで冷やせばよい。だが、そもそも電力効率が高いと、コストが高くなる上、エッジも含め、いろいろな場所で使えない」と打ち明ける。 モナカでは通常の半導体技術の進歩から言えば「規格外」ともいえる富士通独自の超低電圧動作技術を取り入れ、空冷でも高い性能を引き出せるようにする。線幅1・6ナノ―1・7ナノメートルといった1世代以上先の半導体技術であり、富士通のプロセッサーが凝縮された格好だ。 モナカはハードウエアレベルの暗号化により、ユーザーごとの仮想マシン(VM)に鍵をかけられる「コンフィデンシャル・コンピューティング」と呼ぶ、先進技術も実装する。複数のVMを同時に動かすハイパーバイザーがハッキングされてもデータ保護が可能だ。 産業を支えるデジタルインフラの安全性は経済安全保障の観点からも重要であり、モナカは次世代の国産プロセッサーの先駆モデルとしても注目される。