戦争犯罪を裁く国際裁判所は「正義」をどう実現しようとしているのか 「人道に対する罪、座視しない」「法の支配を促進する」…2人の日本人裁判官が語ったこと
▽略歴 あかね・ともこ 愛知県出身。1982年に検事になり、函館地検検事正などを歴任。2018年3月から現職。 ▽国際刑事裁判所とは 人道に対する罪や大量虐殺、戦争犯罪などを犯した個人を訴追、処罰するための常設の国際刑事裁判機関。2003年、オランダのハーグに設置された。日本は2007年10月に加盟。ロシアや米国、中国などは加盟していない。2023年3月、ウクライナからの子ども連れ去りに関与した疑いがあるとして、戦争犯罪容疑でロシアのプーチン大統領らに逮捕状を出した。 【岩沢雄司・国際司法裁判所裁判官】 国際社会は国内社会と違って裁判が普通に行われる状況にはありません。国家間の紛争を扱う常設の裁判所ができたのは戦禍が非常にインパクトがあった第1次大戦の後で、長い人類の歴史の中でわずか100年くらい前の話です。しかし、紛争を力ではなく法に基づいて裁く仕組みができたのはとても大事なことです。
国際司法裁判所(ICJ)が法を適用して判決を出し、紛争の平和的な処理に貢献していくのはとても意義があることです。それによって国際社会における法の支配を促進することにもなります。国際社会が国際法というルールによって規律される仕組みを強めていくという役割をICJは果たしていて、それが国際平和の維持にもつながっていくと思います。 国際裁判は紛争当事国の同意がないとできません。そこが国内裁判と大きく異なり、最も難しいところです。同意の与え方の一つとして裁判の受け入れを事前に受諾する方法があり、受諾宣言をしている国の間では裁判が成り立ちます。日本は宣言をしていますが、宣言国は国連加盟国の3分の1しかありません。残りの国は宣言をしていないので裁判が成立しにくいですが、今後より多くの国が宣言をするようになれば、紛争が起きた時に提訴することが容易になります。 もう一つの問題点は、国内の裁判所と違って、判決を国が守らない場合、裁判所には執行する力がないことです。