太陽に愛されるシチリアで生まれた、包容力のあるロゼ「ドンナフガータ ルメラ」:美酒のある風景
Forbes JAPAN本誌で連載中の『美酒のある風景』。今回は10月号(8月23日発売)より、「ドンナフガータ ルメラ」。ほどよい酸とタンニンがさまざまな料理に 寄り添い、ともに高めてくれるような1本だ。 Q.世界で最も多くのワインをつくっている国は? おそらくフランスアメリカなどと答える人が多いだろうが、正解はイタリア。その生産量は年間で約50億リットルと、2位のフランス(約46億リットル)とともに、3位のスペイン(約36億リットル)を大きく引き離している。 そのイタリアの代表的なワインといえばキャンティ、バローロ、ブルネッロなどの赤ワインがまず浮かぶ。が、今回はトスカーナやピエモンテとも並ぶワイン産地として知られている、イタリア最大の州であるシチリアに注目してみたい。 「シチリア産ワインの魅力はまず多彩なバリエーションです。海沿いから標高1000mまで、さまざまな環境にブドウ畑があることで、フレッシュに飲めるカジュアルなワインから、熟成に適した骨格のしっかりしたワインまで、さまざまなタイプのワインが楽しめます」と語るのは、イタリア料理店「シチリア屋」(東京・白山)オーナーシェフの大下竜一。シチリア島にはおよそ500ものワインメーカーがあり、また土着品種も65種ほどあるとされるので、そのワインがいかに多種多様であるか、想像に難くない。 「なかでもこの『ドンナフガータ ルメラ』は、ほどよい酸とタンニンがさまざまな料理に寄り添い、ともに高めてくれるような名バイプレイヤー。当店では月ごとにグラスワインリストを新しくしているんですが、ついこの一本は入れたくなってしまう。(リストを)変えたいという気持ちと、(ワインを)入れたいという気持ちで常に揺れ動いています(笑)」 この日、合わせてくれたのは、シチリア原産のハーブであるフィノキエットに、卵、ペコリーノチーズなどを合わせて団子にし、一度揚げてからトマトソースで煮て、松の実とレーズンをトッピングするという、名物「フィノキエット団子」。フェンネルの野生種と紹介されることも多いフィノキエットの清涼感と甘みが口いっぱいに広がる一皿を、「ドンナフガータ ルメラ」が確かに受け止め、そのおいしさを互いに増幅させるよう……大下シェフのシチリアへの愛を存分に感じさせるペアリングであった。 「ドンナフガータ」といえば魅力的な女性をデザインしたエチケットでも知られているが、この「ルメラ」は愛をテーマにしたシチリア派の詩人ジャコモ・ダ・レンティーニのソネット(詩)に登場する女性の名前なのだとか。太陽に愛されたシチリアのロゼを飲みながら、心までほんのり薔薇色に染まっていきそうだ。 ■ドンナフガータ ルメラ 2023 容 量|750ml 品 種|ネロ・ダヴォラ、シラーほか 価 格|3080円(税込参考小売価格) 問い合わせ|クリオ・インターナショナル 03-6434-5301 ■今宵の一杯はここで シチリア屋 東京で出会えるシチリアの郷土料理 2014年にオープン以来、東京でシチリアさながらの味が楽しめる店として多くの食通から注目を集め続けているイタリア料理店。2度めのイタリア修業先として選んだシチリアの自然や風土、人々にすっかり魅せられたという大下シェフが、現地で学んだ郷土料理の数々はどれもシンプルにして力強く、奥深い。食材もできるかぎりシチリア産にこだわる同店はまさに“東京のシチリア”だ。 ■シチリア屋 住所/東京都文京区白山1-5-5 MC白山ビル1F 電話/03-5615-8713 営業時間/18:00~22:30(LO21:30)、土・日12:00~14:30(LO13:00)・17:00~22:00(LO21:00) 休/月曜・火曜
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