不登校の子がゼロに、子どもが「学び合う」授業に変えた小学校の大変化 教師自身が学び合う姿勢を持てることが大切
「今から20年前、子どもが主体的に学ぶ授業を目撃し、目から鱗の衝撃を受けた」ーー。そのときから試行錯誤で子どもたちに任せる授業スタイルを完成させていったという大阪市立大隅西小学校校長の原雅史氏は、2017年に小学校の校長になったことをきっかけに学校全体で学び合いの授業に取り組んできた。どんな授業なのか、子どもたちはどのように変わったのか。教育ジャーナリストの中曽根陽子氏が取材した。 【写真を見る】教師のデスクの位置にも工夫が 「主体的・対話的で深い学び」をスローガンに掲げた学習指導要領が施行されて5年目に入りました。出だしからコロナでつまずいた感が強い教育改革ですが、現場はどういう状況なのでしょうか。 以前、変わりたくても変われない現場の実態を書きました。こちらの記事を読んで、学習指導要領が施行される前から、児童同士が学び合う授業に変えていこうと努力をされてきたという先生から、ぜひ現場を見てほしいとご連絡をいただき、やっと伺うことができました。 今回訪問したのは、大阪市東淀川区にある大阪市立大隅西小学校。原雅史校長先生に話を聞きました。
児童同士が学び合う授業はどう違うのか?
大隅西小学校で取り組んでいるのが、児童同士が学び合う授業です。授業を見せてもらってまず驚いたのが、先生も座って授業をしていることです。これは、児童と目線を合わせるためだそうですが、確かに、教師が前に立って、座っている児童に向けて話すと、どうしても上から見下ろす視線になります。 すると、先生は教える人で児童は受け手になり、主体的にはなりません。先生はそんなつもりはなくても、子どもたちは威圧感を感じるかもしれません。目線を合わせることで、自然に先生と児童の関係が変わるのです。また、教室に教卓はなく、代わりに黒板の前に踏み台が置かれていました。これは、児童が板書をしやすいようにという配慮です。 見せてもらった3年生の国語の授業では、最初は黒板を向いて座っていた子どもたちが、「辞書を取ってきて、漢字辞典の中身がどうなっているのか見てごらん」という教師の声かけと同時に、一斉に机を動かして4人グループの島を作り始めました。 後ろの本棚から持ってきた辞書を開き、早速気づいたことについてグループごとに話し合いが始まりました。その間、教師からの指示はありません。 様子を見ていると、皆主体的に授業に参加している様子で、辞書をめくりながら気づいたことを話し合っていました。先生は各グループの間を回って様子を見ながら、必要に応じて声をかけ、話し合いに加わります。驚いたのは、学び合いに参加せず、ぼーっとしている子は1人もいないことでした。 また、別のクラスでは算数の授業中。モニターに映された動画を見ながら立体図形について説明を受けていた子どもたちが、さらに難しい課題に取り組みながら教えあっていたり、コの字型になって顔を合わせながら話し合いをしているクラスもありました。 コの字型のレイアウトが基本形で、場の状況に合わせて、ペアまたは3~4人で一組のグループに自由に変えていくそうです。グループは、できるだけ男女が混合になるようにしているとか。これも男女混合のほうが多様な意見が出やすいというエビデンスに基づいているのです。