「集中力続かない」「ミスが増えた」...メンタル不調への対処は「睡眠負債」と「マルチタスク」がカギ
セルフケアがうまくいかない場合の対策
睡眠、リラックス、マルチタスクを避けるなどのセルフケアに取り組んでみても、今一つ効果が感じられない、あまり状況がよくならないというときは、専門家に頼ることもご検討ください。 どのような相談窓口があるかについては、会社の体制によって異なります。社内に保健師や産業医などの医療職が常駐していて、希望すれば面談を受けることができる会社もあれば、外部の相談窓口と提携していて電話でのカウンセリングサービスを利用できる会社もあります。 社内で相談窓口がなくても、睡眠や身体的な不調についてはメンタルクリニックの受診、悩みごとに関してはカウンセリングサービスを使うなど、利用できるサービスは近年増えています。最近では、オンラインでの診察やカウンセリングを受けられる機関も増えています。
組織としてメンタルヘルスケアを推進する
業務量や内容、職場での人間関係などの仕事に関することがストレスの原因になることも多いですから、個人の努力に任せるだけでは十分ではありません。 ストレスチェック制度が始まって数年が経ち、ストレスチェックの実施については、だいぶ馴染みのあるものになっているのではないでしょうか。今回は、もう一歩進んだ取り組みをしたいという企業のために、厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」についてご紹介します。 「労働者の心の健康の保持増進のための指針」では、4つのケアということで、①セルフケア、②ラインによるケア、③事業場内産業保健スタッフなどによるケア、④事業場外資源によるケアが提唱されています。 事業場の規模によって、どういうサポート資源が利用可能かについて制約があるかもしれませんが、ラインによるケアについては、上長と部下という関係性があればどのような組織でも実施可能です。 ただ、上長の方の役割や、何を期待するかについては設定しておき、研修などで対応方法を伝えることは必要です。 部下を持つ人、特に管理監督者に期待される役割としては、部下の様子をみて、健康問題の予兆があれば、ケアをする、あるいは適切な相談先につなげる、ということです。ケアというのは問題を解決したりアドバイスをしたりということではなく、あくまでも業務に関しての調整です。 たとえば、体調が悪くて業務効率が落ちているようであれば、一時的に業務量を減らす、あるいは、負担になっている業務や人間関係と距離を取れるようにするという調整です。 人事的な処遇や医学的なアセスメントに関しては、人事や産業保健職などの専門家に任せてもらってかまいません。 セルフケアに関する情報提供や、ラインケア体制の整備など、組織的にメンタルヘルスケアに取り組む場合は、できるだけ働く人のニーズに応じたサポート体制をつくれるよう、衛生委員会などで従業員のニーズをつかむことから始めてみましょう。
最後に
今日は、集中力低下などのメンタル不調の徴候に気づく方法、セルフケアの方法、組織的にメンタルヘルスケアに取り組む際の情報源についてお伝えしました。 厚生労働省のサイト『こころの耳』には、さまざまな情報が集められています。読者の方の組織、会社、事業者に合った情報を選べる情報源ですので、ぜひ活用してみてください。 [執筆者]日下慶子(労働衛生コンサルタント、産業医) ※当記事は「経営ノウハウの泉」の提供記事です